西田幾多郎全集第1巻の発売を前に3日前から岩波書店の前に行列ができ、当日未明は200人の徹夜組が並んだ=1947年7月19日午前2時 日本を代表する出版社の一つである岩波書店は、1913年8月、古本を中心に新刊書と雑誌も扱う書籍商として開店した書店であった。出版業を開始するのは、漱石の『こころ』を刊行した翌14年9月である。 1959年、岩波書店は小売部を閉鎖、書店部門は、元々岩波書店の保険関連業務などを請け負うために設立された信山社が、岩波書店から店舗を借り受けるかたちで営業を継続した。そこへ、1978年4月、芳林堂書店店長を辞したばかりの柴田信さんが入社する。信山社は、柴田さんの再就職先だったのだ。 書店人生を支えた最大のモチベーション 5年後の1983年、柴田さんは社長に就任。その時点では岩波書店が株式のほとんどを保有し、資金繰りも管理、柴田さんの社長業は主に労務管理だったという。