礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。 ◎吉田甲子太郎『星野君の二塁打』(1947)について 青木昌吉著『独逸文学と其国民思想』(春陽堂、一九二四)を紹介している途中だが、クライストの戯曲『公子フリードリッヒ・フォン・ホンブルグ』の内容を追っていくうちに、最近、やや話題になっている「星野君の二塁打」という道徳教材のことが思い浮かんだ。 野球選手の星野君が、大会への出場がかかった大切な試合で、バッターボックスに立った。監督から「送りバンド」のサインが出る。しかし星野君は、サインを無視して強打、これが二塁打となって、勝利に結びついた。この結果、チームは大会への出場権を得たが、監督は、星野君がサインを無視したことのほうを重く見た。そして監督は、星野君に対し、大会に出場させないという処分を申し渡した。――おおむね、こ