◇分断招く隣組的な心性 福島県南相馬市で診療と内部被ばくの検査、健診、除染などにかかわっている東大医科研の坪倉正治医師によれば、現時点で慢性被ばくによる大きな実被害の報告は、ほとんどないとのことである(小松秀樹「放射能トラウマ」医療ガバナンス学会メールマガジンvol・303)。 むしろ深刻なのは、外部からの批判や報道などによる社会的な影響のほうである。原発事故による最大の被害は、子どもの“放射能トラウマ”だ。しかもその多くは、大人の“放射能トラウマ”による“2次的放射能トラウマ”であり、年齢が低いほどトラウマの程度が強い印象があるという。 風評被害の影響もあって、うつ状態になる人が増えたり、家族が崩壊したりという事態は耳にしていた。現地で子どもの電話相談窓口を担当している人からは、このところ虐待相談も急増しているという話も聞いた。 被災地での虐待件数についてはまだ正確な統計データが得られて
東日本大震災被災者向けの「民間賃貸住宅借り上げ制度」を利用して多くの県民が他県に自主避難している福島県が、全国の都道府県に対し、今月末で同制度の新規受け入れを打ち切るよう要請していることが分かった。福島県災害対策本部によると、11月下旬に事務レベルで要請、近く文書で正式に連絡する。年度替わりの来春に自主避難を検討している人や支援者からは「門戸を閉ざすのか」と戸惑いの声が上がっている。 新規打ち切りの理由について、同対策本部県外避難者支援チームは(1)災害救助法に基づく緊急措置で、恒常的な施策でない(2)避難先の自治体から「期限について一定の目安が必要」と指摘があった(3)東京電力福島第1原発の「ステップ2」(冷温停止状態)が、政府の工程表通りに年内達成が見込まれる--などと説明している。既に同制度で避難している人は引き続き入居できる。 同制度は、避難先の自治体が一定額までの借り上げ費用を肩
新しい住宅地はすべて波にのみ込まれ、田老一高い6階建てホテルだけが残った。その「たろう観光ホテル」も3階以下は赤い骨組みがむき出しのまま。「津波が来たら最も危ない」。宮古市田老総合事務所(旧田老町)職員の大下哲雄さん(55)が常々そう感じていた地区(B地区)には今、わずかに残った住宅の残骸と破壊された防潮堤の破片が点々としている。 3月11日。大下さんは田老港に近い高台で、国民宿舎だった建物の解体に立ち会っていた。三陸の観光拠点と期待されながら、経営難で閉館した施設だ。地震後、作業員とその場にとどまっていると、沖から大砲を撃つようなごう音が聞こえた。父から大津波の前兆と聞かされていた音だった。 大下さんの曽祖母は1896(明治29)年の明治の大津波で家族6人を失い、ただ一人生き残った。その孫である父の信平さん(87)は9歳で昭和の大津波に遭い、母を亡くす。大下さんにとっての祖母だった。父か
相次ぐ爆発や放射能漏れが起きている東京電力福島第1原発。左側手前から奥へ1~4号機=2011年3月15日午前7時33分撮影(東京電力提供) 東京電力福島第1原発では、非常用発電機が津波で浸水してすべての電源が失われたため、東電は中央制御室に仮設バッテリーを持ち込んで対応している。原子炉の状態を直接監視できる中性子計測装置が電源喪失でダウン。間接的に監視できる圧力計と水位計も多くが故障したとみられる。原子炉の冷却などに不可欠なデータが把握できず、「暗闇」の中で現状把握に苦慮している。 「信頼性は分かりませんが」。12日に水素爆発で原子炉建屋(たてや)の上部外壁が吹き飛んだ1号機。報道陣に囲まれ、原子炉圧力容器内を冷やす冷却水の水位を尋ねられた東電の担当者は、こう言って水位計の値を読み上げた。計器異常は、東電を苦しめた。 地震発生時に運転中だったのは1~3号機で、核燃料の冷却にはとりわけ注意が
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く