第二次世界大戦中、ナチス・ドイツによって遂行されたユダヤ人の大量虐殺、これを「ホロコースト」と呼ぶ。600万人にも上る犠牲者を出したこの未曾有の惨劇について考えるとき、私たちはすぐにアウシュヴィッツ強制収容所での組織的・機械的な殺戮を想起しがちである。 だがこうした一面的なイメージにとらわれすぎると、アウシュヴィッツに行き着くまでのホロコーストの紆余曲折に満ちた展開を見落とすことになりかねない。 実のところ、ユダヤ人犠牲者の大多数はこの収容所での殺戮がピークを迎える以前に別の場所で殺害されており、殺害の経緯や方法もアウシュヴィッツでのそれとはかなり異なっていたのである。 本記事では、そうした重要な論点を5つのポイントにまとめ、それらを中心にホロコーストの大きな流れを整理することで、この史上類を見ない惨劇を理解するのに必要な基本的視角を提示したい。 ①アウシュヴィッツがホロコーストのすべてで