『生命倫理事典』にさえ載っていなかったことにびっくりしたので,紹介しておこうと思います。 1987年,ジョージワシントン大学のメディカルセンターで,妊娠26週で持病の癌が悪化したアンジェラ・カーダーは,自分も家族も希望しなかった帝王切開を裁判所命令で強制された。13歳から闘病生活を送ってきたアンジェラは,自分が帝王切開に耐えられるとも,胎児が無事に生まれるとも考えておらず,家族もアンジェラの意志を尊重し帝王切開を望んでいなかった。だが胎児の生命への権利を理由に医療過誤で訴えられることを怖れたメディカルセンターの要請で,裁判所でヒアリングが行なわれることになった。だがそのヒアリングには彼女の主治医は招かれず,胎児の生き延びる確率が60%(健康体の妊婦の場合より若干低い程度の数値)だと述べた小児科医の証言が採用されて,帝王切開の命令が下された。アンジェラの治療を長年担当してきた主治医は後に,自