クルマは幸せの象徴であった。少なくても広告表現上はそうだし、現実生活においてもそうだった。現実と広告の世界におけるシンボルは一致していたのだろう。 とりあえず「あった」と過去形で書いてみたものの、いつ頃まで「象徴」であったのだろうか。もちろん、高度成長期はそうだろう。僕が入社したあとにバブルが来て、その頃も同様の文脈だった。 潮目が変化したのは、90年代半ばだと思う。この頃に複数の自動車のCMがきわめて類似したアプローチをとった。 「クルマを買うまでのプロセス」を描いたのである、 それまでのクルマの広告は、「商品をいかによく見せるか」が最大テーマだったといってもいい。そのために海外のダイナミックな景観を求めてロケに行ったり、走りのシーンにこだわり続けた。 そこにおけるクルマは「完成された商品」であり、その完成度の高さを競い合っていたともいえる。 一方で「買うまでのプロセス」を描