雨後のタケノコのように出る「大恐慌本」を立ち読みしてみると、ほとんどが「アメリカ金融資本主義の破綻」→「新自由主義は終わった」→「思い切った景気対策を」といったお手軽な論理展開で、これなら池尾・池田本も製品差別化できそうだ。本書を読めば、そういう「ネオリベ批判」がいかに下らないかがわかるだろう。 本書はハイエクの最後の著作だが、これまで邦訳が出ていなかった。それは本書がどこまでハイエクの著作なのかについて疑問があったからだ。ハイエクは健康を害していたため、彼が書いたのは未完成の草稿(未公開)だけで、それをW・バートリーⅢ世が編集したのだが、このとき編者が大幅な改変を加え、しかもそれを明記しなかったため、どこまでがハイエクの著作かよくわからなかった。ただ最近の研究では、大筋ではハイエクの了解を得ており、それほどひどい改竄は行なわれていないとされる。 内容の完成度は高くないが、90歳に近か