北畑発言にみられるように、日本人の「株主ぎらい」は根深い。これは従来、いわゆる間接金融の優位や株式の持ち合い、あるいは日本の経営者が株主の介入をきらう心理などによって説明されてきたが、本書はそれを日本の株式市場の特殊性によって説明しようとするものだ。 堂島の米市場で世界初の先物市場が成立したことはよく知られているが、このように投機的な市場が早くから発達していたことが、株式市場にひずみをもたらした。戦前の株式市場では、出来高の9割は先物取引だったという。今でも株式を「銘柄」とよぶのは、商品取引の感覚だ。商品市況にはファンダメンタルズという概念はなく、気候などの偶然に支配されるのでギャンブルに近い。先物などの保険が発達したのも、こうしたリスクをヘッジするのが目的だった。配当性向もきわめて低かったため、インカムゲインはほとんど問題にならず、短期の投機的な売買が中心になった。 他方、企業の側も