本の文化をどのように継承するのか? 一枚の紙が折丁となり綴じられていく工程——ルリユールの源流を辿り、最も装飾が洗練されていた時代の職人の世界を分析する。書物とは何か? 本をつくる場所からその根本を問う、工房からの書物史。 本書が主たる考察対象とするのは、活版印刷が成熟して書物の生産が盛んになり、装幀技術が定着した17、18世紀における本づくりの世界である。この時期こそ技巧を凝らし円熟を見せた、きわめて質の高い製本術が発展し、今なおその歴史の中での頂点とも言える技が開発された時期である。 この本は、特定のある時期の限られた技術・文化の話としてではなく、正に出版史的出来事が大きく変容している今の時代にこそ、私たちに働きかける内容となっている。 20世紀までのフランスでは、「仮綴じ」と「製本」という特有のかたちが根付き、読者は書店で購入した仮綴じを、製本職人に製本依頼していた。本書では、このフ