2012/12/279:0 知識人の反則 大野更紗 仮設住宅で暮らしているある女性が、「近ごろ、毎朝悪夢をみて、汗びっしょりになって起きる」と一言、言ったそうです。わたしは女性の台詞を人づてに聞いて、どきりとしました。 心当たりがあるからです。わたしも、悪夢にうなされるときがあります。それは大抵、何が起きているか把握することすらできぬ「嵐」にあっている最中です。 震災は、平等に人をおそいません。神戸の仮設住宅で、仮設診療所をひらいていた額田勲さんというお医者さんが、こういうことを書いています。 「瓦礫の下敷きになった受難者は、圧倒的に社会的弱者と考えられる人びとであった。『医療の不平等はどうにもならぬが、死はある程度平等だ』と、漠然とその辺のことをごまかしてきた自分にとって、死の不平等を目撃させられたことは強烈な衝撃であった…」「なんとかなる」とは、とても思えません。無残に人が死んでゆくこ