映画評論家・町山智浩氏が、映画「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」を真摯に評論、さらに、ドラッカー的に正しいアイドル映画とは何か、なぜ(良質な)スポーツ映画は人を感動させるのかを語り尽くします。町山氏の「公認」の下、掲載しました。
ダーレン・アロノフスキー監督の「ブラック・スワン」には、今敏監督の「パーフェクト・ブルー」に似たシーンが多く見受けられます。 電車の窓にヒロインが映るシーン 壁に貼られたヒロインの絵が動くシーン 他にも、夜道ですれ違うシーン、鏡の破片で×××というシーン、その他いろいろありますが、このスライドがわかりやすいです。↓ http://www.mythoman.com/post/2858799810/black-swan-vs-perfect-blue 「ブラックスワン」は「パーフェクトブルー」をきれいに裏返した構造になっています。 「パーフェクトブルー」では、清純派アイドルが汚れ役を演じる時に「白い」清純派としての自分に苛まれ、演じてるドラマと現実の区別がつかなくなっていきます。ヒロインが人格分裂(以下白字)したのではないかと思わせますが、実は彼女のマネージャーが「白い自分」であることが判明。
年末にはマウント・シャスタという山にスキーに行った。 シャスタをニューエイジの人たちはパワーストポットだと信じていて、3000メートル超の山頂からの雪解け水は霊水としてもてはやされている。 が、そんな聖地にアメリカ一口汚くて怒っぽい男が住んでいる。 人は彼を「ウィネバゴ・マン」と呼ぶ。 ウィネバゴとはアイオワ辺りのアメリカ原住民の部族名で、アイオワにある大手キャンピングカーの社名でもある。だからウィネバゴはキャンピングカーの代名詞にもなっている。 そのウィネバゴ社の商品解説ビデオが80年代からアンダーグラウンドで流通していた。新型キャンピングカーの新機能やセールスポイントを紹介するビデオ宣材だ。なぜ、そんな退屈そうなビデオがアングラで? NG集、使われなかったアウトテイク集だからだ。 モンティ・パイソンのジョン・クリーズに似た、巨体に禿頭、口髭で目つきの険しい男がカメラに向かって説明する。
ウチのはす向かいの家のジョアナちゃんにはお父さんが2人いる。 両親は同性カップルなのだ。 ウチはイーストベイと呼ばれる、サンフランシスコから橋を渡った東岸にある。サンフランシスコ、特にカストロ地区は世界最大のゲイ・タウンとして知られている。数万のゲイやレズビアンの人々が住み、ゲイバーやクラブが並び、深夜を過ぎてもネオンが輝き、音楽があふれ、笑い声が絶えない、きらびやかでにぎやかで、まさにflamboyantな(けばけばしい)街だ。 しかし、ゲイの人も家族を持ち、子どもができると、だんだんとサンフランシスコを出て、その周辺の郊外住宅地に移っていく。子どものためにもっと静かで健全で安全な環境を、もっと偏差値の高い学校を、と親が求めるものはみんな一緒。それで、ここイーストベイには子持ちのゲイ・カップルが多いというわけ。 ウチの娘は幼稚園の頃から、友達に同性カップルの子が何人もいたから慣れてしまっ
銀色に輝く流線型のロケット。1930年代のパルプ雑誌の表紙にあったような宇宙船が目の前にそびえたっている。本当に金属製で、10メートルほどあって人間が乗れる大きさだ。 その向こうでは蒸気機関で動くロボットが白い湯気を吹き上げて人力車を引いている。スティーム・パンク――内燃機関が発明される前に人類が夢見たハイテクだ。 こちらではライブ演奏が始まった。楽器の周りで何人もが汗びっしょりで自転車をこいでいる。このアンプはすべて人力発電機を電源にしているのだ。 真っ赤な消防自動車がある。ただしホースから吹き出すのは真っ赤な炎だ。英語で消防車をファイヤーエンジンと呼ぶからって本当にファイヤー出すなよ! そこら中、奇想天外というか奇妙奇天烈なメカやマシンだらけで超ワクワクする「メイカー・フェア」に行って来た。 今年はカリフォルニア州サンマテオで5月22・23日に開かれた。DIY(Do It Yourse
サリンジャーは生前、自分の小説の映画を許可しなかった。『フィールド・オブ・ドリームス』映画化の時も、原作どおりサリンジャーを登場させることはできなかった。 でも、今はどうなんだろう? 遺書には「映像化を永遠に禁じる」とか書いてあるのかな? 3月21日にアメリカで放送されたTVアニメ『サウスパーク』はサリンジャーがテーマだった。 「今日はみんなにこの本を読んでもらいます」 サウスパーク小学校のギャリソン先生は段ボール箱いっぱいの『ライ麦畑でつかまえて』を持って4年生の教室に現れた。 「読書かよー。オレ、大っ嫌い」 勉強嫌いのカートマンが文句を言うが、先生は続ける。 「これは今まで教育委員会に禁じられていた本です。言葉が強烈です。今でも図書館によっては置いていません」 「先生、これって、読んだ奴が人を殺したって本ですか?」 主人公のスタンが尋ねる。 「たしかにジョン・レノンを殺した犯人はこの本
『ザ・ランナウェイズ』公式サイト ハロー、ダディ、ハロー、マム 私はチチチチチ、チェリー・ボム! 1977年、ザ・ランナウェイズが日本にやって来てNHKの『レッツゴーヤング』に出演した。チェリー・カーリーは下着姿で股をガバっとガニマタに開いて腰をグラインドさせたがNHKはロングショットでしか写さなかった。翌日月曜日に学校に行くと男子生徒たちは「昨日ランナウェイズ見た? すげえ小っちぇえパンツ!」と盛り上がり、女子は「男子って嫌ねえ」と眉をひそめていた。 しかしチェリー・カーリーが書いた自伝『ネオン・エンジェル』によると、来日したランナウェイズに殺到したファンは女子中学生や高校生ばかりだったという。制服向上委員会など存在しない時代のモッサい制服の胸の奥で日本の処女たちはアメリカから来た家出娘たちに憧れ、鏡の前で舌出して中指立てたりしていたのだ。 さて、その『ネオン・エンジェル』が『ザ・ランナ
(筆者注)今回の内容は読者を不愉快にさせる可能性があります。あらかじめおことわりしておきます) 7月10日金曜日午前0時、バークレーの映画館前は学生たちとマリファナの匂いで満ちていた。今日は『ブルーノ』の公開初日だ。チケットの行列に並んでいるとマリファナが回ってきた。路上だが、誰も気にしない。バークレーとはこういう町なのだ。 『ブルーノ』は、『ボラット/栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』(2006年)に続くサッシャ・バロン・コーエン主演のコメディ映画。コーエンはロンドン出身だが、『ボラット』ではカザフスタン国営テレビのレポーター、ボラットと称してアメリカ各地を取材した。片言の英語で話すコーエンを本当にカザフ人だと信じたアメリカ人たちを、いわゆるCandid Camera(どっきりカメラ)方式で撮影しておちょくった。これが全世界で260億円以上を売り上げるメガヒットになったの
2月24日の夜、バンクーバーのダウンタウンには真っ赤な洪水が押し寄せていた。オリンピックの男子ホッケーで、地元カナダがロシアを下したのだ。 カナダの国旗メイプル・リーフの赤い服を着た約10万人が母国の勝利に熱狂していた。その前の試合でアメリカに負けたので悲願のメダルは一瞬遠のいたが、ロシアに勝って4強に残ったわけだ(この後、カナダは五輪最終日にアメリカと再選し、延長戦で見事に金メダルをつかんだ)。 オイラは集英社のスポーツ雑誌『スポルティーバ』の取材でバンクーバーを訪れた。日本選手の取材はあちこちのメディアでやるから、自分のテーマは「ホッケーとカーリングを通してカナダを考える」というもの。試合会場だけでなくホッケー・バーやカーリング場を訪れて地元の酔っ払いから説教されたり、自分でカーリングしてみたりの珍道中。3月5日に発売なので書店で見てください。 地元からTBSラジオ「キラ★キラ」にも国
「アンダーカバー・コップ」というと身分を隠して潜入捜査する警察官のことだが、米CBSテレビの『アンダーカバー・ボス』は、大企業のCEOが自社の末端の労働者として仕事の現場に潜入する番組。 たとえば全米のゴミ処理を独占するWM(ウェイスト・マネージメント)社のCEOがゴミ回収の仕事に就く。周囲は彼が社長だとは知らない。テレビカメラは撮り続けているが単なる取材だと言われている。だからゴミ回収車のドライバーが本社のCEOを「このオッサン、いい歳して全然使い物にならないな!」と怒鳴りつけたりする。ボスは初めて社員の苦しみ、生活の厳しさを知り、待遇改善の必要を感じたりする。 先週の「アンダーカバー・ボス」はフーターズの社長コビー・ブルックスだった。フーターズは巨乳レストラン・チェーンだ。ウェイトレスはみな巨乳、それがピチピチのタンクトップとホットパンツでむちむちぷりんと客を迎える。女の子の乳と尻と太
今週末はスーパーボウルだ。ニューオリンズ・セインツとインディアナ・コルツの頂上決戦だ。 地元チームが出場しない場合、アメリカではみんな、何かの理由で応援するチームを決める。親戚が住んでる場所とか、好きな選手がいるチームとか。 オイラが応援したいのはニューオリンズ・セインツだ。2005年のハリケーン・カトリーナでニューオリンズは破壊され、セインツのホームであるスーパードームは被災者たちの家になった。市の完全な復興は今も成し遂げられていない。そんな逆境で戦い、スーパーボウルに勝ち進んだ聖人たちを讃えよう。 それにセインツにはスコット・フジタがいる。フジタは「藤田」だが、彼は完全な白人で、その体には日本人の血は1滴も流れていない。しかし心は日本人だ。スコットは幼くして日系人のフジタ夫妻の養子になった。家では日本語を話し、日本食で育てられた。日本の歴史や伝統を教わり、第二次大戦時に日系人が収容所に
えー、まず本日、ポッドキャスト「町山智浩のアメリカ映画特電」を更新しました。 http://www.enterjam.com/tokuden.html 今回は、「ビーバス&バットヘッド」「キング・オブ・ザ・ヒル」「イディオクラシー」のマイク・ジャッジ(オイラと同い年)の新作映画「エキストラクト」です。 テキサスで、バニラやイチゴのエキスを抽出して瓶詰にしている工場が舞台。 主人公(ジェイソン・ベイトマン)は大学で化学を学んで抽出技術を開発し、卒業と共に起業して工場を経営する40歳。 豪邸に住み、BMWに乗るが、会社経営に飽きて、大企業への身売りを考えている。 しかも妻とはセックスレス。 第二次やりたい盛りというか中年の危機の40歳に悶えるベイトマンの前にぷりぷりの美女(ミラ・キュニス)が現れた! ↓「エキストラクト」予告編 ポッドキャストがつながらない場合はアクセスが多すぎてサーバーがダウ
何度も言うけど、唐沢俊一に書評委員をやらせた朝日新聞の木元記者はその責任を取るべきだ。 唐沢俊一は2008年に「ライ麦畑」について「月刊ほんとうに怖い童話」(ぶんか社)にこんな記事を書いているが、どう考えても実際に本を読んでいない。 ビートルズの元メンバーであるジョン・レノンを殺したマーク・チャップマン、レーガン元大統領を暗殺しようとしたジョン・ヒンクリーなど、殺人犯たちの多くが愛読書にしていたのが、ジョン・サリンジャーの青春小説『ライ麦畑でつかまえて』である。 ある日、突然大学生活がバカバカしくなり、テストの答案を白紙で出して退学になった主人公ホールデン・コーンフィールド。 なぜ彼は学校を飛び出したのか。なぜ彼は社会に対して、凄まじい疎外感を抱くのか。 1950年代、繁栄の絶頂にあったはずのアメリカに生まれたが、人生に目標を失い、生きていく希望を持てなくなった世代、 すなわちロスト・ゼネ
面白かった。タランティーノの映画みたいに饒舌で、ムチャクチャで、何度か爆笑した。どこまで本気なのか、シリアスか洒落なのか分からないハチャメチャさなのだ。しかし、こちらが驚き、たじろいだのは、著者が愛し、影響を受け、オマージュを捧げているネタ(作品と作者名)を臆面もなく作中と巻末の謝辞で(その数、約60余)割っていることだ。 たとえば、主人公の大河内太郎が、敵の手先である男を捕まえ、体育館でパイプ椅子に縛り付け、いたぶり、口を割らせるところ。映画好きなら、タランティーノ監督の映画『レザボア・ドッグス』のポスターにもなったシーンを想起するはずだが、主人公はそれを見透かしたように語る。 こんな書き方をされ、ネタを明かされたら、評論家の一部はメシの食い上げだろう。ネタの知識を売り物にし、素材とルーツを突き止め、比較対照をしたり、「誰それの後継者」「××がすでに書いている」といったことをあげつら
ゴールデン・グローブ賞授賞式の会場に立つ筆者。テレビ番組の取材のために紋付、袴を着ている(1月17日) 「授賞式が間もなく始まります。御着席ください!」 アナウンスが始まった。 オイラは、ゴールデン・グローブ賞の受賞式が行われるビバリー・ヒルトン・ホテルにいる。テレビ局に頼まれてレッドカーペットを歩いてくるスターや監督たちにインタビューしていたのだ。なにぶん初めてのことだからドジを踏みまくったが、詳しいことはラジオや雑誌で。 ドタバタの挙句、式典が始まる時間が来て、これで終わりか......とため息をついてたら、ひと際大きな歓声が上がった。 あの白髪は......ジェームズ・キャメロンだ! どんなスターよりも悠然と、笑みをたたえて手を振るキャメロンはまるで王者。なぜ? キャメロンが作品賞と監督賞にノミネートされている『アバター』は『タイタニック』に迫る大ヒットになったが、ゴールデン・グロー
ゼネラル・モーターズ(GM)がポンティアックとサターンの投げ売りバーゲンをすると発表した。どちらも2009年に生産を終えたブランドだ。 09年5月にデトロイトに行った時、ポンティアック市を訪ねた。この街出身の有名人にはマドンナがいる。彼女の父親はポンティアックのエンジニアだった。 ポンティアック工場の向かいにある労組事務所で話を聞いた。広報担当者は「工場がなくなれば、ポンティアックという市自体が消えてしまうだろう」と嘆いた。「いいかい? 私たちが生まれ育った町自体が消滅するんだ」 ポンティアックといえば、筆者の世代にはなんといってもファイヤーバード・トランザムだ。ボンネットいっぱいに火の鳥を描いた70年代マッスル・カーだ。同じく70年代を象徴する胸毛にヒゲのスター、バート・レイノルズがトランザムでうるさいパトカーをやっつけるアクション・コメディ『トランザム7000』(77年)という映画まで
バチェラー・パーティ(結婚式直前の花婿が悪友たちと一緒に独身最後のエッチなバカ騒ぎをするアメリカの風習)でラスラスベガスに遊びに来た男たち4人。 高級ホテル「シーザーズ・パレス」に部屋をとり、景気づけに一気飲みしたら、翌朝まで記憶がない。強烈なハングオーバー(二日酔い)だ。しかも、ホテルの部屋では虎がガルルルと唸っていて、赤ん坊がほぎゃあほぎゃあと泣いている。おまけに乗ってきた自動車はパトカーに替わっている! この虎はオレたちが買ったのか? 赤ん坊は一晩で作ったのか? 昨夜、オレたちはいったいどれだけハメを外したんだ? おまけに肝心の花婿が行方不明。結婚式は明日なのに! 3人の男が失われた一晩を取り戻そうとラスベガスでドタバタを繰り広げるコメディ映画『ザ・ハングオーバー』は、ヘザー・グラハム以外無名のキャストなのに内容の圧倒的な面白さで興行収入270億円超えのウルトラメガヒット。今年最も儲
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