ボクは『フライト』をとても面白く鑑賞したのですが、「つまらない!」という意見に「あれ?そうだったかな?」と面白くみた自分を疑いだしたので自分メモシリーズを書きます。ネタばれしてます。 アルコールとドラッグがもたらす恐怖が…… ない? 本作では主人公ウィップがアルコール中毒でコカイン常用者である事が重要なファクトとなっています。しかし、それらはあくまで象徴です。実際、劇中で、ウィップは大酒をくらいコカインをキメながらも、墜落必須の飛行機を奇跡的な機転とテクニックによって救っています。車を運転しながら大五郎の巨大なペットボトルみたいなウォッカの大瓶をぐびぐびラッパ呑みしても事故は起こしません。でろでろに酔っ払っても表立った場所へはコカインでしゃっきりしてから出ていきます。 飲酒シーンは大量にありますが「アルコール中毒やドラッグ服用による」恐怖や弊害は描かれていません。せいぜいが恋人を口汚く罵る
『世界にひとつのプレイブック』鑑賞。 映画で「目に見えないが存在している物」が現れると非常に高揚もたらします。「愛」という感情や「恐怖」「不安」などといった概念そのものがまざまざとスクリーンに現れた瞬間に立ち会うため、映画館に通っていると言ってもいいです。同じように不可視であるはずの「祈りの力」が見えた時も大きな感動を呼びます。スポーツを描いた作品に多くの傑作があるのはスポーツ自体が「祈りの力」を重用するものだからです。 特にプロ同士の試合では力やテクニックに試合を左右するほど大きな差はありません。「調子」や「空気」「流れ」といった、メンタルな要素こそが勝敗を分けるのです。そういった、勝因とするにはあやふやな根拠を当然のように描けた時に、その映画は「傑作」になります。さらに、プレイヤーその人を描かず、周囲のスタッフやファンの目線から描いた時に「祈り」は純化されます。なにしろ自分では祈ること
『ジャッジ・ドレッド』鑑賞。 原作はイギリスのコミックです。日本では20年以上10年くらい前に一度、バットマンとのクロスオーバー作が翻訳されているだけ*1で、あまり馴染みの無いキャラクターです。アンスラックスの「ジャッジ・ドレッド」をテーマにした曲「I am the Low」でスラッシュ・メタルファンには知られていると思います。 一番有名なのが95年にシルベスター・スタローン主演で作られた映画版でしょう。当時のスタローンといえば『デモリション・マン』だろうが『スペシャリスト』だろうが口ひんまげて半裸でウェーウェー言ってるだけ*2なので、「ジャッジ・ドレッド」原作に思い入れのある人には大変不評だそうです。 ボクは原作の方は上記したバットマンとのクロスオーバーもの、DCの馬鹿キャラ「ロボ」とのクロスオーバーものを洋書で読んでいたくらいで、あまりよく解ってません。原作では、ドレッドは絶対に顔を見
『ゼロ・ダーク・サーティ』鑑賞。 それはそれとして。余談から書き始めますが。ヘルメットにくっついた暗視グラスや、その緑がかった映像は異様に燃える。あと、目に見えないけどセンサーに反応は出ていて、その反応が徐々に近づいてくる描写も燃える。もちろん秘密兵器や公にはできない秘密作戦も燃える。 その点、『ゼロ・ダーク・サーティ』の燃焼加減はハンパでは無い。そもそもこのタイトルが「深夜0時30分」を意味する軍用語だと言うじゃないか! 本作は全ての元中学生を焚きつける「暗視グラス」「秘密作戦」「センサー反応」にあふれた燃え作品です。さらに、史実を元にしていながら、ものすっごいカッコいい場所ですげーカッコいい兵器開発をしているケレンの利き方には、椅子の上で転げまわるほど燃えました。 あと先日、本ブログで紹介したナッシュ・エジャートンの弟、ジョエル・エドガートン*1も、シールズ隊員のリーダーで登場します。
町山智浩さんのツイートでタランティーノの新しい彼女のHPが紹介されていました。 http://www.liannespiderbaby.com/ リアン・スパイダーベイビーさん。ファンゴリア誌、フェイマス・モンスターズ誌などでライターを務める方のようです。名前の由来はパム・グリア主演『コフィー』や『残酷女刑務所』の監督、ジャック・ヒルのデビュー作『スパイダー・ベイビー』からです。歳をとるごとにバカになり、人を喰いはじめる呪われた家族の恐怖を描いた映画です。*1さすが、QTの彼女になるほどの人物。わかってらっしゃる! 彼女の素性を知って、ボクが最初にイメージしたのは『桐島、部活やめるってよ』で橋本愛が演じた「かすみ」だ。 『桐島〜』を見た多くの(主に)映画秘宝読者たちが「橋本愛!けっきょくコッチ側の人間じゃないんだ!裏切られた!」と悲鳴をあげています。『鉄男』の特集上映に女の子独りで駆けつけ
『ドラゴン・ゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝』鑑賞。 『ドラゴン・ゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝』はツイ・ハークが『ワンチャイ』シリーズ以来14年ぶりにジェット・リーとタッグを組んだ新作だ。 物語は『ドラゴン・イン』の3年後ということだが、私はずいぶん前に見たきりだし、オリジナルの『残酷ドラゴン! 血闘竜門の宿』も他のキン・フー作品と混じって記憶しており、ほぼ予備知識ゼロの状態での鑑賞。話自体は若干込み入っているが、シーン毎に敵対したり共闘関係を結んだりが解り易く演出されているので、いきなり本作を見ても大丈夫。というか、ストーリーを追うのに気を取られてしまうくらいなら、解らないままボーっと鑑賞すべき作品だ。そう言い切れてしまうほど、物語は本作の魅力にさほどからんでいない。 武侠もの映画は昔から、いかに重力を無視するかに腐心している奇妙なジャンルである。70年代にキン・フーやチャン・チェがトランポリン
どうもこんにちは。 いよいよ、この週末、浜松町からカッコいいモノレールに乗って3駅。「流通センター駅」下車。その名も東京流通センターで開催される「第15回文学フリマ」にて、話題沸騰、人気爆発でおなじみのBootleg新しい号が発売されます。 その名も「Bootleg ALONE」! 今回はいじめやマイノリティーをテーマに豪華執筆陣による面白コラム満載でお送りいたします。入稿済んで一息ついたBootleg編集長が、こちらも毎年おなじみワッシュくん主催のベストテン企画「ホラー映画ベストテン」に参加します! http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20121031 ホラー映画ベスト10 1位 『死霊のはらわた』(1981)サム・ライミ監督 2位 『遊星からの物体X』(1982)ジョン・カーペンター監督 3位 『クリープショー』(1982)ジョージ・A・ロメロ監督 4
『桐島、部活やめるってよ』について、人の感想を読むのが面白い。 かなり親切な作りですが、スッキリとしたオチめいた物を提示していないので、憶測が憶測を呼び自由な解釈をしている人も多く、多種多様さが楽しいのです。しかし、中には「全くわけが解らない?」と言う人も多いのです。そこで、『桐島』を理解するための基礎的な解釈をしてみようかと思います。当然ながらオチ(的な話)にも言及しますので、まずは劇場で『桐島、部活やめるってよ』を観賞をした後にお読みください。本エントリは高校生に読んで欲しいです。読んでないと思うけど…… 『ゴドーを待ちながら』 本作にはタイトルロールになっている「桐島」は登場しません。「桐島がいない」というのがドラマの軸になっています。これは舞台劇『ゴドーを待ちながら』のオマージュだと言われています。 『ゴドーを待ちながら』は1952年に発表された戯曲で不条理劇の傑作だとされています
『桐島、部活やめるってよ』観賞。 傑作です。現在、かなりの強敵を前に興行的に苦戦しているようですが、もし劇場へ駆けつけたなら後々自慢できる体験になるでしょう。必見です。まだ未見でしたら以下を読む前にまず劇場へ向かってください。 「ナンバー1にならなくてもいい もともと特別なオンリーワン」と歌う「世界に一つだけの花」ほど残酷な歌は無いだろう。歌うのはジャニーズ事務所きってのスターグループSMAPであり、作詞作曲は稀代のヒットメイカー槇原敬之である。幾度となくナンバーワンに輝いた彼らは多くのファンにとって特別なオンリーワンであり、度々ナンバーワンにすらなった事がある。しかし、市井の人々のほとんどは彼らとは違い、誰か一人にとってのオンリーワンですら無い事実を受け入れざるをえない。代替えの可能な「ワン・オブ・ゼム(大勢の中の一人)」なのだ。 ほとんどすべての人にとって大いなる挫折を味わうのが高校
『ヘルタースケルター』観賞。 見るつもりなんか毛の先ほども無かったのだが、監督である蜷川実花の写真を見て力の抜ける半笑いとともに映画への興味がわいた。今の今まで意識して蜷川実花の写真を見た事が無かったのだが、街の巨大看板などで「品格とバランスを欠いてギャル化したピエール&ジルみたいだなあ…」と思っていた写真が蜷川の手によるものだと知ったからだ。 ピエール&ジル*1は80年代に活躍した写真家である。「ミカド」や「サンディ&サンセッツ」のジャケット写真などが有名で、インド宗教画などを模倣した色彩感覚と、50年代のコマーシャル写真に顕著な「斜め上をむいてニッコリ」というようなポージングなど、徹底した“キャンプさ*2”が特徴である。彼らが活躍した当時から「写真家」としてカテゴライズすべきかどうか疑問視する声は多かった。撮った写真はあくまで素材で、極彩色の背景やキラキラとしたきらめきは後から書き加え
『Catfish』観賞。 一部、手の早い映画好きの間で話題になっていた映画で、日本ではまだ劇場公開はもちろん、DVDリリースも決まっていないようです。予告を見ていたのですが、「なんだよ、またパラノーマルかよ…」と、むしろ食傷気味に思えたなかで消化試合に臨むような気分での観賞でした。見終わって、確かに冷たい手を背中に突っ込まれたような気分にはなりますが、飛び上がるようなショックシーンは無くて生真面目な作りだなぁとあまり良い印象は無かったんです。で、ネットで詳細を調べて驚愕し無茶苦茶落ち込みました。 これ、モキュメンタリーじゃなくてドキュメンタリーかよ…… 『Catfish』キャットフィッシュを直訳すると「なまず」です。もしかしたら、この映画が語源なのかもしれませんが、アメリカでのネットジャーゴンで「なりすまし」も意味しているようです。そして、この映画の中ではまた別の、非常に悲しみに満ちた意味
5月6日(日) 第十四回文学フリマ 開場・11:00(〜16:00終了) 場所・東京流通センター 第二展示場(E・Fホール) アクセス・東京モノレール「流通センター駅」 入場無料 Bootleg Basic 執筆者(名前の長さ順) 侍功夫 古澤健 破壊屋 宮本彩子 深町秋生 速水健朗 ナマニク 永岡ひとみ 真魚八重子 とみさわ昭仁 マトモ亭スロウストン くわしくはBootleg公式ブログをチェックのこと!↓ http://d.hatena.ne.jp/bootleg_magazine/20120417/1334667286 〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜※〜 今回のテーマを立ち上げたきっかけはツイッター上で「シネフィル」の定義についてのまとめでした。 http://togetter.com/li/224080 ボク自身の経験なんだけど、20代中頃にジャッキー・チェンやス
「何故『セブン』はハッピーエンドなのか」を書かれたtwitterID:@kmovieさんに本エントリーへの感想をいただきました。 「何故『セブン』がバッド・エンドなのか」読んで、まあ面白かったけど、映画外の話が多すぎて、結論にあんまり説得力がなかった。あと、監督の発言を金科玉条にして、映画内の事象を語り得ると思うというのは、町山さんのメソッドの影響が強いんだろうな。 作り手の発言は、内容を読み解く材料にはなるが、絶対的根拠とはなり得ない。一回完成してしまうと、その作品は作り手から距離を置いたものになるので、作り手の意志は尊重しつつも、作品自体から読み解く姿勢が必要。芸術家とはしばしば、再考し、嘘をつき、混乱するものだ。だから批評が必要になる。 もちろん参考にするのはいいけれど、監督に質問した内容をそのまま書けば、それは取材活動だし、DVDのコメンタリーを聴いて書くというのは報告に過ぎない。
※いきがかり上『セブン』『カサブランカ』『ドラゴン 怒りの鉄拳』『ガメラ3 邪神〈イリス〉降臨』のエンディングについて書いています。 デビッド・フィンチャー監督の出世作『セブン』は宗教がらみの深淵なテーマや徹底した後味の悪さも含め『羊たちの沈黙』以降のサイコホラーブームの中でも飛び抜けた存在として語られています。その『セブン』がハッピーエンドだったというブログエントリーが注目されています。 何故『セブン』はハッピー・エンドなのか http://k.onodera.blog.ag/index.php/k.onodera/00000000000000016134 要約すると、ジョン・ドーは憤怒の罪の犠牲者として死にたかったのに、ミルズはその敬虔なクリスチャン性を発揮し、他人の罪を引き受ける犠牲的で崇高な精神の元で引き金を引いたので、ジョン・ドーは決して「憤怒の罪」の犠牲にはならなかった。 サマ
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