平成21年(2009)末、渋川春海(しぶかわはるみ) (1639-1715) を主人公とした冲方丁(うぶかたとう)著の小説「天地明察」が刊行され、暦を題材にした小説としては異例の売れ行きを示した。春海は将軍に仕える囲碁の家元四家の一つ、安井家に生まれた棋士だが、日本の暦が約800年ぶりに改まる契機となった貞享暦法(じょうきょうれきほう)を作った人物でもある。貞享暦成立には、それまで中国や日本で使用されていた暦の存在だけでなく、日本における数学や天文学の発展、春海の周囲の人々の学問的・政治的協力などが深く関わっていた。 なお、本文中で斜体の個所は「天地明察」から引用した登場人物たちによる言葉である。 『宣明暦(せんみょうれき)』 寛永二十一年(1644) 刊本3冊 貞観元年(859)、渤海(ぼっかい)国 (698-926 現在の中国東北部、朝鮮半島北部、ロシア沿海州) の使節を通じて宣明暦法