「他社の広報活動から学べる事が多い」そのような話をよくしますが、是非見てほしいのは、今まさに盛り上がっている会社と、一番注目されていた時期を過ぎた会社(もしくはまだ未成熟な会社)の両方です。 まさに上り調子の会社、その中でも上場していたりする会社は、待っていても取材がたくさん来ます。そんな中では、どのように動けば良い広報活動につながるかを見極めたり、よからぬ取材(取材と称して接近してくる怪しい人たちもいますし、いろいろあります)を避ける危機管理の能力が問われたりします。 急激に成長すると、周りの人たちの顔ぶれも変わりますし、接し方も変わったりします。いままでのように、気軽にブロガーを社内に招いて対話イベントをしてということもできなくなります。社名がツイートされたらすぐに反応して返していた活動も、そんな時間が取れなくなります。そこをどうするか。今の置かれた状況を客観視して活動する能力が求めら
先日、お客様の役員向け広報レクチャーを行う機会があった。役員全員が会社の情報取り扱い上級責任者であり、特にマスメディアを通じた情報発信についての知識は不可欠、という社長の強い意識のもとで開かれた。やっぱり、企業の広報活動はトップの理解が大きな推進力になります。 広報に関連するレクチャーを実施するときはだいたいいつも、広報の基本的な考え方から、記者会見やプレスリリースや取材対応などの具体的な活動内容に入って、情報管理や危機対応における広報の役割で締める。きわめてオオソドックスなスタイルであるが、営業やサービスの現場の方々の感覚とかけ離れた、広報かくあるべき論が強すぎないように心がけている。 とはいえ、このようなレクチャーを行うと、たとえば営業部門の方から「そうはいってもさ、会社の意図通りの記事が出ないことがよくあって困るんだよね。記事を読んだお客さんに誤解を与えてしまうし、余計な説明もしなき
航空会社スカイマークの乗客向け対応方針を明記した「サービスコンセプト」という機内文書が物議をかもしている。「荷物の収納は手伝わない」「丁寧な言葉遣いは義務付けていない」「苦情は受け付けない」などナイナイづくしの内容だそうです。 わたしはこの件の報道に触れ、ポイントカードはお持ちですか問題もついにここまできたかと思った。つまり、抗議を受けないようにすることが最優先事項になってしまった日本の社会において、起こるべくして起こった出来事だということである。 いまやほとんどすべての店で聞かれる「ポイントカードはお持ちですか」という語りかけは、もちろん「ポイントカードを持っているのに出し忘れているのではありませんか、ポイントがつかないと損をしますよ」というお客への親切心で言っているのではない。あとになって「ポイントカードを確認してくれたら思い出して出せたのに」という文句を言うお客、つまり「ポイントがつ
「本社の外国人が来日するんでインタビューを!」こういう依頼を、私が記者だったときに何度も受けた。 その外国人が、超大物のCEOだったり、読者が喜ぶようなおもしろい話が聞けたり、新製品やサービスのまだ出ていない話が聞けたりするなら意味がある。 ただ、新製品もない、製品のロードマップは話せない、とにかく、来日しちゃうんだから、なんとかインタビュー入れてくれと言われたから、うまくまとめてくれ、みたいな場合もある。 取材は、読者の気持ちを考慮し、ニュース性があるかも考慮して実施をしている。取材依頼を全部鵜呑みにして記事にしていたら、企業側の論理で伝えたい事ばかりになり、つまり広告的な内容ばかりになってしまう。そんな内容では読者は離れてしまう。では、どうするか。 そんな場合はできるだけ事前にお断りをしていた。というのは「取材してもらったから掲載されるんだろう」と相手に期待を持たせてしまうからである。
復興相の発言が問題になり、辞任までには至らなかったが謝罪となった。最近、ほんとうに政治家の失言、方言、暴言が多い。たしかに二の句がつげぬみっともないものもたくさんあったけれど、一方で、今回の発言のてんまつも含め、日本全体が言葉に対して不寛容になっていると感じます。 前の前の首相のように言葉がライトすぎるのも問題だけど、政治家が美辞麗句や耳障りのいい言葉でその場しのぎを繰り返したら、わが国を生き返らせるための議論はできない。国民の同意も得られない。メディアの揚げ足取りに屈せず、自分自身の言葉で語ってもらいたい。 企業でも、社会から信頼を得ようとするならば、積極的な情報発信が不可欠だ。それも、経営者や社員のおなかの底から出てくるリアリティーに満ちた言葉に意味がある。特に経営者には、記者発表会やメディアのインタビューなどの広報活動において、業界の展望や会社の方針を自分の言葉で堂々と語ることが求め
以前のエントリー「カタカナ表記について」でも冒頭触れましたが、新卒で入ったIBMという会社は、まっ先に社内用語集が配られるほど専門用語の多い会社でありました。 まず新人研修のときに慣れるのに苦労したのが、英字や数字の羅列である。ES/9000、AS/400、RS/6000、PS/55、S/88などの製品名からはじまり、3270、5250などなど。パソコンすらさわったことのない文系学部出身の新入社員には、その英字と数字のかたまりと実物を結びつけるパスがなく、最初はまったく頭に入ってこなかった。 次に英文字略語である。MVS、AIX、SNA、CMOS、RISCなどのテクノロジー用語に多い。でも一番びっくりしたのはEBCDICである。IBMがつくった文字コードのことであるが、これをELT(Entry Level Trainingの略、つまり新人研修)の教官は「エビシディック」と読むといった。Bが
先日の日曜日にIT企業時代の先輩宅に遊びに行った。休日の昼から飲もうという魂胆である。たまの昼酒っておいしいです。酔いがまわるのもはやいですけど。(月曜からこんな書き出しですみません。) 最寄り駅のたまプラーザで、お酒とおつまみになるものを買おうと駅前のショッピングセンターに入る。地下のフードフロアにおりて、パンとスープとオリーブとデザートとビールを買った。デパ地下というのはほんとうにおいしそうなものがいろいろ売ってます。でも、一店一店かならず「ポイントカードはお持ちですか?」と聞かれるのには閉口した。毎回「持ってないです。」とこたえるのですが、さすがに短時間に何回もこたえているとちょっとめんどうだなと思った。 このとき、そういえば記者や編集者がよく「一日に何回も記者発表会の出席確認やプレスリリース到着確認の電話がきて、そのたびに検討してますとか届いてますって答えて、それで半日つぶれた。か
このブログをはじめて今日で289日が経った。だからといって特になにかの節目でもなんでもなくちょっと数えてみただけなのであるが、ついでにもうひとついうと、わたしが書いたものは今回で40話となる。 これまでメモのような日記とプレスリリースよりほかにまとまった文章を書いたことがなかったわたしにとって、このブログを書くことはとてもよい訓練となっている。なにかを続けるということは、なにかいいことをもたらしてくれるです。 「つぎになにを書こうかなあ」と思いを巡らせていると、考えることが習慣になったというか、言葉に敏感になったというか、一見関係のない事象を結びつけてみたり、ひとつのことをすこし掘りさげて考えてみたり、そして何よりどう書いたらうまく伝えられるのかを考えるようになった。 フェイスブックやツイッターが普及してきて、だれでも簡単に気軽に文章を書いて、だれかに届けたり公開したりすることができるよう
短い時間だからと、プレゼンターにお水を用意しないケースがあります。 確かに話すのは10-20分程度のことも。でも、短時間でも、急に咳込んだり、緊張して口の中がからからになったりすることがあるのです。そんなときお水があれば、解決します。当たり前のことなのに、こんな些細な事も省略しないようにしたいものです。 余談ですが、よく会見の場として使われるアーバンネット大手町ビルのレベル21は、お水は無料で用意してくれます(サービス料をとられるのでその中に入っていると思われます) まとめ:講演者にもお水を用意
ここ数年で広報に関する書籍がたくさん出版されるようになった。大きな書店では、ビジネス本の書棚にマーケティングや広告とならんで独立した広報のコーナーができている。広報という仕事が世間に認められるようになったあかしであるならば、とてもうれしい。 最近このての本を好んで読むことはなかったのだけれど、企業広報ブックという6冊シリーズの広報の教科書のようなものが発売されたので、読んでみようと思って買ってみた。6冊のうちの「広報の基本」と「メディア・リレーションズ」を買った。 なにげなくぱらぱらっと「メディア・リレーションズ」のほうをめくってみると、「リークについて」という項があった。ちょっといやな予感がした。 予感は的中した。そこには教科書らしく、メディアに対しては公平にね、ということが結論にはなっているのだが、「リーク」なるものがあたかも広報手法のひとつで、広報の専門用語のように定義されてしまって
プレスリリースの話をつづけます。実務編です。 財団法人地方自治情報センターは3月18日、地方公共団体から発信される情報のファイル形式について、文書ファイルはHTML、スキャンファイルはJPEG、表形式ファイルはCSVを使い、容量が大きいPDFやExcelは避けましょうと呼びかけた。詳細はこちらで。 これは「被災して情報を取得することが困難な状況にある地方公共団体に向け」発信されたものである。しかし、その他の政府・官公庁、企業でもプレスリリースやIR資料などさまざまな公開情報をPDFでホームページにアップしているところが少なくないとすると、緊急事態でなくとも一考の余地があるでしょう。 情報を受け取る相手の環境に想像を巡らすことが必要であるという点では、プレスリリースをメディアに送る方法にも同じことがいえる。 結論から言ってしまえば、メールで送付するプレスリリースはテキストで送るのが原則だろう
もうかれこれ4年も前のことになるのだけれど、2007年3月31日付朝日新聞土曜朝刊別刷り「be」にアートディレクターの佐藤可士和氏のインタビューが掲載されていた。SMAPのCDジャケットのデザインや明治学院大学のブランド作りなどで有名な人である。 その記事の中で氏は、自らの仕事はコミュニケーション・コンサルタントであって、「相手から答えを引き出すこと」であり、「本当はあなた、こうしたいんじゃないの?ということをズバッとつかんで、鮮やかに解決したい」と言っている。 当時独立して一年が経とうとしていたわたしは、分野は違うけどそんなふうに仕事したいなと思って、記事を残しておいたのだが、先週事務所の整理をしていたら切り抜きが出てきた(大事な記事なのに整理が悪い)。 そのインタビューは、なぜ人の記憶に残る広告が作れるのか、という問いに対し、「僕が『広告は、見てもらえないもの』だと思って、作っているか
ITほど専門用語が多い業界はないでしょう。特に英文字略語。新卒でIBMに入社したとき、部厚めな手帳くらいのブルーの表紙の「社内」用語集が新入社員全員に配られた。そこには英文字略語が満載であった。 その後サン・マイクロシステムズに移って広報の仕事を始めたときに不思議に思ったのが、長音を省くカタカナ表記である。 わたしは、できるだけ原音にあわせて表記するほうがよいという考えなので「ー」をつけたくなるのだけれど、以前ユーザー事例のプレスリリースを書いてお客さんにレビューしてもらったら、「ー」が全部なくなって戻ってきた。 よく使われる語で例をあげてみると、このとおり。 コンピューター/コンピュータ メモリー/メモリ プロセッサー/プロセッサ サーバー/サーバ プリンター/プリンタ モニター/モニタ コンパイラー/コンパイラ それから、こんなものある。なんかへん (と思うのはわたしだけ?)。 ユーザ
英国人哲学者バートランド・ラッセルの「自由人の十戒 (A Liberal Decalogue)」。 数年前、当時の上司から、広報マンの心得ともいえるんじゃないか、といって教えてもらったのがきっかけで、今でもたまに見直して自らの行動指針にしている。 今回、あらためて読み返してみた。 以下、日本語訳を「バートランド・ラッセルのポータルサイト」の「自由人の十戒」より引用する。 http://russell.cool.ne.jp/beginner/JYUKKAI.HTM 一、何事も絶対に確実だと思い込んではいけない。 二、何事も証拠を隠してまで、物事をはこぶ価値があると考えてはいけない。なぜなら、そういった証拠は必ず明るみに出るものだからだ。 三、成功を確信しても、考え続けることを決してやめてはいけない。 四、反対意見には(家族の反対でも)、議論で説得し、権威で勝とうとしてはいけない。権威を使って
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