ロンドンのメイフェア地区に位置する僅か500mに満たない通りには紳士服のテーラーが30前後も軒を連ねている。紳士服の聖地として200年以上の歴史を持ち、テーラード・スーツの日本での呼称である「背広(せびろ)」の語源とも言われている。その通りの名をサヴィル・ロウという。人々は敬意と憧憬を込めてこの通りを「ゴールデンマイル」(黄金の道)と呼ぶ。 この本はサヴィル・ロウの歴史と、サヴィル・ロウを代表する11のテーラーを紹介したヴィジュアルブックである。おさめられているスーツの造形や職人の道具を見るだけでも、その美しさに惚れ惚れとしてしまうはずだ。また写っている職人の表情や手のしわが語りかけるようで、とても素敵なのも見所だ。 サヴィル・ロウの名声を支えているものは「ビスポーク(bespoke)」と呼ばれる完全注文の紳士服である。「ビスポーク」は「話し合う」という意味を持つbe-spokenを由来と