琴坂 なるほど。不適切な比較によって、「失われた20年」という観念が後押しされてきた可能性は確かにありますね。ただ一方で、所得格差の広がりや労働市場が抱える諸問題などのように、日本ではそれ以外にも多くの要因を背景として「失われた20年」が議論されています。 ロッタンティ その通りだと思います。学術文献を読んでも、あるいは日本人の同僚との会話でも、所得格差の広がりや労働市場の問題に関係するキーワードが幾度となく登場します。例えば、「フリーター」「格差社会」「労働の脱標準化」などです。 よく例に挙げられる、就職難で正社員として内定をもらえない大学院生は、まさしく、そうした苦難の体現者でしょう。職を失った正社員が、非正規の仕事しか見つけられないのもそうです。そのような個々の悲劇は枚挙にいとまがなく、深い悲しみすら覚えます。 しかし、ブリントさんが述べたように、私たちが経済学者としての責任を果たす