私はかつて外国人にサインをねだられたことがある。ひとりはサーストン・ムーア、もうひとりがダニエル・ジョンストンである。最初にサインしたのはダニエルだった。21世紀になってはいたが、もう何年も前のことだ。だれかにサインを書いたのはじつはこのときがはじめてだった。サイン処女というものがあるなら、この言い方はいまだとジェンダー的によろしくないかもしれないが、私はそれをダニエルに捧げた。私は当時雑誌の編集部員で、取材でダニエルに会ったとき、彼は手渡した号の表紙をしげしげと眺め、この本はあなたが書いたのですかとたずねた。正確にはダニエルが隣のオヤジさんに耳打ちし、オヤジさんが通訳の方に訊ねたのを彼だか彼女だかが私にそう伝えたのだった。私はその質問に、雑誌なので全部私が書いたのではありませんが、編集はしましたと答えた、するとまたオヤジさんがサインをしてくださいとにこやかに述べられた。私はサインなどした
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