入江昭『日本の外交 明治維新から現代まで』 小菅信子『戦後和解 日本は〈過去〉から解き放たれるのか』 波多野澄雄『国家と歴史 戦後日本の歴史問題』 大学で日本の近代史を教えていたころ、中公新書はまさに理想の教材だった。廉価で入手しやすく、現在に通ずる大きなテーマについての全体像を、歴史的な奥行きとともに伝えてくれる。紹介する3冊はどれも、ゼミで輪読するテキストに選んだ作品だ。 戦前期を主に扱う『日本の外交』が描き出した、「政府の現実主義と民間の理想主義」のテーゼは、専門家のあいだで常識となったいまでも、なお多くの読者を驚かせるに足るだろう。無残な敗戦を経た後でふり返るかぎり、現実を見失って暴走したのは「政府」の側だという――「民間」の免罪と裏腹の――先入見に、つい私たちは囚われるからだ。しかしそれを一度取り払わないと、過去の実像は見えてこない。 アウグスティヌスの正戦論まで遡る『戦後和解』