文/池上信次 2023年3月28日に亡くなった音楽家、坂本龍一。作曲家、編曲家、演奏家、プロデューサーであり、手がけたジャンルはクラシックから現代音楽、ポップス、映画音楽まで、その活動の幅は「全音楽」といってもいいくらいに広いものでした。もちろんジャズもそこに含まれています。坂本龍一のジャズでの活動でもっとも知られるのは、渡辺香津美(ギター)のフュージョン・グループ「KYLYN(キリン)」への参加でしょう。坂本はYMOでも活動中の1979年春にスタジオ録音盤『KYLYN』を渡辺と共同プロデュースし、録音直後にはツアーにも参加。その演奏はライヴ盤『KYLYN LIVE』として発表されました(いずれも日本コロムビア)。矢野顕子(キーボード、ヴォーカル)、清水靖晃(テナー・サックス)、村上ポンタ秀一(ドラムス)らが参加した「若手」オールスターズであるKYLYNは、当時のフュージョン・シーンの台風