──『PERFECT DAYS』を観て感動するのは、平山という主人公の送る日常のルーティンが実に美しく描かれていること、そしてそのルーティンが少しだけ崩れたときにまた新たな物語が始まっていくことです。こうした描写を見て、誰もが日常の貴重さを痛感させられたパンデミック下の日々を思い浮かべずにいられなかったのですが、この映画をつくるうえで、やはりパンデミックに対する思いがあったのでしょうか? ヴィム・ヴェンダース(以下、WW):まさにポスト・パンデミックの物語であり、新たな始まりへの想いを込めた映画です。そして新しい生活のお手本になるのがこの映画の主人公だと思う。多少理想化された人物ではありますが、平山の世界の見方は素敵なものです。消費文化に追われることなく、大きな木の根元にある小さな芽や木漏れ日のような、他の人々が見逃してしまう些細なものに目を留めることができる。本を一気に何十冊も買うのでは