『文蔵』2008年1月号(PHP文庫)の特集記事「『直木賞』の基礎知識」より。 (『二つの山河』で第111回直木賞を受賞された作家・中村彰彦さん(20年近く文藝春秋社での勤務経験あり)と多くの直木賞作家を担当し、選考会の司会も務めたことがあるという文芸編集者(『オール讀物』編集長などを歴任)・豊田健次さんの対談「直木賞のウチとソト」から。「直木賞に取り方はある?」という項の一部です) 【豊田健次:中村さんは三度候補になっての受賞でしたね。 中村彰彦:受賞の時は、ある雑誌に250枚一挙掲載を二ヵ月続けていて、500枚を必死で書いていたので受賞できるかどうかと考えている暇がなかったですね。ただ、直木賞はあくまでも「1勝、勝ち抜け」の勝負ですから、仮にそれまでが相撲取りなら十両に転落するような成績でも、1勝すれば直木賞作家になれるんです。 豊田:池波正太郎さんは5回候補になってからの受賞でしたが