「緩さ」「貧しさ」の自覚こそ強さ 作家の保坂和志氏語る2008年11月12日保坂和志さん 作家の保坂和志氏の小説論『小説、世界の奏でる音楽』(新潮社)が刊行された。『小説の自由』(05年)『小説の誕生』(06年)の続編で、文芸誌「新潮」に「小説をめぐって」と題して連載した小説論3部作がこれで完結した。5年にわたり「書きながら考えた」軌跡がうかがえる。 〈私の読み方はスポーツの観戦に近い〉と保坂氏は記す。 「かつてはテーマや枠組みを考えるとか窮屈な読み方をしていたが、自分が小説を書くようになってから読み方が違ってきた。小説とは本来、その作品世界にいつまでも浸っていたい芸術。読書にかけた時間の長さが小説を楽しむ基本だが、ひと言でスパッと言う批評ではその量が無視されてしまう。だから3冊という量で言おうと思ったんです」とモチーフを語る。 「小説の言葉は本来、あいまいさを含めて広がりがあるものなのに