田中芳樹さんの小説「銀河英雄伝説」は、私にとって民主主義の「入門書」とも言える存在だ。 遠い未来の宇宙を舞台に、専制政治の銀河帝国と民主共和制の自由惑星同盟の対立を描くこの作品は、両陣営の名将たちが知略を尽くして艦隊戦を繰り広げるさまが醍醐味だが、腐敗した民主主義と、善政を敷く独裁制のどちらがいいのかという究極の問いを突きつけてくる。 高校生のころ、民主主義という言葉は知っていたものの、それ以上ではなかった自分にとって、この作品は衝撃で、全10巻と外伝4巻を徹夜しながら読みふけった。 田中芳樹さんの原作をもとに製作されたアニメ「銀河英雄伝説」。主人公のラインハルト(右)とヤン・ウェンリー=©田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリー ©加藤直之 そして今から10年前の2012年5月。田中さんにインタビューする機会を得た。私は当時、モスクワ特派員で、プー