ホップがビールの主原料として使われるようになる以前、中世ヨーロッパではヤチヤナギやペパーミント、月桂樹など、様々な薬草(ハーブ)をビールに混入していた。それらはビールに独特の苦味や風味を与えるだけでなく、醸造過程で雑菌の繁殖を抑え、保存性を高めるのに大切な役割をはたしていたのである。 こうしたビールに配合するハーブ類を「グルート」と呼んでいた。封建社会の領主たちは、領外の湿地帯に自生するハーブの特権を押さえ、グルートの生産と販売の権利、すなわち「グルート権」を独占し、人々に専売することで多くの利益を得ていた。この時代、修道院もまた財源確保を目的としたビールの醸造販売をおこない、両者は商売敵となって激しい利権争いを演じるようになった。 領主「どういうことだ、こないだの凶作で穀物が不足しているというのに、修道院ビールはどんどん出回っているではないか」 醸造主「へい、やはりあちらには神様のご加護
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