第8回 アメリカ型の論理が日本の相互信頼社会を打ち砕く ~訴訟社会の悪しき流行を撥ね返せ!~ 東京財団前会長 日下 公人氏 2005年12月1日 かつて会社は株主のものではなかった 昔、会社の概要にはたいてい「払込資本金」と書いてあった。古い会社の書類には「授権資本3億円、払込資本1億円」などとあったものだ。これは「この会社は3億円の会社だと書いてあるけれど、株主総会でそういう決議をしただけ(授権)であって、まだ株主から支払われていない分があり、払込済みは1億円しかありません」という意味なのだ。すなわち、実質上は資本金1億円の会社である。 大正時代に、商法に特例を設けて、払込資本金は3分の1でよいとした。だからそうした会社は、正確な意味での資本主義の会社ではない。定めた通りの資本がないという、不思議な会社だったのだ。 これは、そのころは株主などはどうでもいいと思っていた証拠とい