はじめに あなたは、最後のページに辿り着き、呆然としているだろうか。それとも、書店やネット上で表紙を見かけて、この本、草野原々による『大絶滅恐竜タイムウォーズ』を買うべきかどうかをまだ迷っているのだろうか。いずれのあなたもさいわいだ。前者のあなたは、人類史のなかで、運よく、この物語を読むことのできた人間なのだから、そして、後者のあなたは、これからこの物語を読むことのできる人間なのだから。 だが、いずれのあなたも困っているかもしれない。呆然としたあなたは、この物語をいったいどう評したものか、どう受け止めたものか、と、そして、購入を検討するあなたは、この魅力的なタイトルの本『大絶滅恐竜タイムウォーズ』を買うべきかどうか、読むべきかどうか、と。 ふたつのあなたは同じ情報を必要としている。すなわち、 「この物語は(何が)おもしろいのか?」 本解説では、これらの問いに答えることを目指す。 先に結論を
哲学者とオオカミ―愛・死・幸福についてのレッスン 作者:マーク ローランズ 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2010/04/01 メディア: 単行本 哲学者である著者がオオカミの子どもを引き取って「ブレニン」と名付けて、アメリカやアイルランド、イギリスにフランスと居住地を変えながらもずっとブレニンと暮らし、ついにブレニンが臨終する際までの生活の記録…を軸としながら、ブレニンとの交流や観察を通じて培われた著者の思索の記録もふんだんに書かれており、様々なテーマについての哲学的エッセイという趣もある本だ。 オオカミを観察することによって動物と人間との違いを再認識して、そこから「人間とは何か」「愛とは何か」「文明とは何か」といったことを改めて考えていく、という構成である。また、哲学のなかでも「道徳」や「幸福」や「人生の意味」など、倫理学的なテーマについての思索が中心となっている。 なにかしら
先週、小耳に挟んだのだが、リカルド・コッキとユリア・ザゴルイチェンコが引退するらしい。いや、もう引退したのかもしれない。ショウダンス界のスターコンビだ。とびきりのダンスを見せてきた。何度、堪能させてくれたことか。とくにロシア出身のユリアのタンゴやルンバやキレッキレッの創作ダンスが逸品だった。溜息が出た。 ぼくはダンスの業界に詳しくないが、あることが気になって5年に一度という程度だけれど、できるだけトップクラスのダンスを見るようにしてきた。あることというのは、父が「日本もダンスとケーキがうまくなったな」と言ったことである。昭和37年(1963)くらいのことだと憶う。何かの拍子にポツンとそう言ったのだ。 それまで中川三郎の社交ダンス、中野ブラザーズのタップダンス、あるいは日劇ダンシングチームのダンサーなどが代表していたところへ、おそらくは《ウェストサイド・ストーリー》の影響だろうと思うのだが、
The Most Perfect Thing: Inside (and Outside) a Bird’s Egg 作者: Tim Birkhead出版社/メーカー: Bloomsbury Publishing発売日: 2016/04/07メディア: Kindle版この商品を含むブログ (2件) を見る 本書は行動生態学者で鳥類が専門のティム・バークヘッドによる鳥の卵についての本である.バークヘッドの本としてはこれまで精子競争を描いた「乱交の生物学」,カナリアと鳥の羽根の色を題材にした「赤いカナリアの秘密」,鳥類の知覚についての「鳥たちの驚異的な感覚世界」などの一般向けの本が翻訳されている.実はバークヘッドの著書にはこのほかにも本格的なリサーチのモノグラフとして「Great Auk Islands; a field biologist in the Arctic」「The Magpies:
Animal Weapons: The Evolution of Battle 作者: Douglas J. Emlen,David J. Tuss出版社/メーカー: Henry Holt & Co発売日: 2014/11/11メディア: ハードカバーこの商品を含むブログを見る 本書は糞虫(食糞性コガネムシ)のツノの研究で有名なダグラス・エムレンによる動物の武器についての一般向けの啓蒙書だ.序言には,子供の頃から大きな武器に取り憑かれていて,博物館ではマストドンの牙やトリケラトプスの角に魅入られていたという想い出が語られている.そしてリサーチキャリアが始まったときに,熱帯で研究できて,身体の大きさに比較して武器が大きく,さらに何のために一部の種に大きなツノがあるのかについて知られていなかったという理由で糞虫を対象とすることになる.糞虫のツノは著者を今も魅了し続けており,本書を書くにいたった
山根明弘『ねこの秘密』(文春新書)を読む。著者は北九州市自然史・歴史博物館の学芸員で、学生時代からノラネコの研究を続けてきた。動物学者が書いた猫の生態に関する(というと難しそうだが実は)易しい猫の入門書だ。猫好きならとても参考になって楽しい。 山根は大学院生のころ、福岡県の玄界灘に浮かぶ相の島でノラネコの研究をしていて、島に棲む200匹の猫全部に名前をつけて個体識別していた。筋金入りのノラネコ研究者なのだ。 だから猫の生態に関する話は伝聞や文献からのコピーなんかではなく、実際に自分が研究したユニークで大変興味深いものばかりだ。「モテるメス、モテないメス」という節では、 メスの発情は、数匹のメスで同時におこることがあります。そのなかには、たくさんのオスに囲まれて求愛を受けるメスもいれば、あまり求愛されないメスもいます。その違いは、メスの若さや繁殖の経験のようです。仔ねこを産み無事に育て上げた
Ten Thousand Birds: Ornithology since Darwin 作者: Tim Birkhead,Jo Wimpenny,Bob Montgomerie出版社/メーカー: Princeton University Press発売日: 2014/03/01メディア: Kindle版この商品を含むブログ (4件) を見る 本書は行動生態学者のティム・バークヘッド,若手リサーチャーのジョー・ウィンペニー,さらにやはり行動生態学者のボブ・モンゴメリーによるダーウィン以降の鳥類学の歴史を語った本だ.バークヘッドは少し前に「The Wisdom of Birds」というやはり鳥類学の歴史を扱った本を書いている.こちらはアリストテレスまでさかのぼって,鳥に関する謎がどう考えられてきて,それが現代科学でどう解決したかについて書かれている本だ*1.おそらくこの前著を書いているうちに
テスタ棒で基板の上を調査している場合、テスタ棒を当てるのにかなり神経を使っている。なぜならICなどピッチが狭い時、一歩間違えれば隣のピンとショートしてしまうかもれないし、きっちり当てないと接触不良で正しい値が得られないからだ。しかしテスタ棒を当てた後、測定値を読み取るには、どうしても視線をテスタに向けなければならない、この時にツルっとテスタ棒の位置を狂わせてしまう事故が起きがちだ。 そこで測定値をPCで読み上げるようにしてみた。うちにあるのはだいぶ昔に買ったM-6000Mというテスターで、RS-232Cで測定値を読み取ることができる。そしてVOICEBOXという便利な読み上げソフトウェアがあるので、これらを組み合わせれば出来そう。このテスタを買った当時は、どうやらRubyでも同じようなアプリを作成していたようだ(もう12年も前なのか)。今回はRustでゼロから書き直した。RS-232Cから
ネットサーフィンを楽しんでいたところ、ふと懐かしい「恐竜の飼いかた教えます」を見かけてしまい、これが再版と知って即購入、小学生の頃に感動し、後の人生を変えてしまった一冊について書かずにはいられなくなったので、書こう。 Uncyclopediaが好きで、笑えて仕方ないような人ならば、確実にツボに入る選択肢になるはずだ。 「恐竜の飼いかた教えます」は、愛玩動物として、番竜として、あるいは家畜として、さらには動物園用として、我々人間の友である恐竜たちを紹介し、その飼い方、入手方法を解説している。さらに恐竜を飼うにあたって必要な最低限の道具、一般的な病気と治療法、そして恐竜を入手するための恐竜ショップの紹介など、恐竜を家族の一員として迎えるために必要な知識一式が網羅された必携の入門書である。 「恐竜の飼いかた教えます」は、所謂「生物系三大奇書」、つまり「鼻行類」「並行植物」「アフターマン」などの「
17,8世紀のフランス思想史を、動物霊魂論という観点から紐解く本*1。 デカルトの動物機械論、つまり動物はただの物質に過ぎず、言うなれば機械仕掛けで動いているようなものなので精神はないという考えに対して巻き起こった様々な反応、とでも言えばいいか。 メインは、17,8世紀のフランスだが、前史としてアリストテレスからモンターニュ、現代の動物哲学としてデリダやシンガーなども簡単に紹介されている。 第一章 動物論の前史 アリストテレスからモンターニュまで、いわばデカルト以前に西欧ではどのように動物が捉えられていたか概観するもの 動物の行動から、動物にも感覚があり、推論できる理性があり、あるいは美徳すらも備わっていると考えている事例が多い。 アリストテレス 動物にも〈知恵〉などの精神活動を認めている記述が見られる。 また、霊魂ということについて、(1)栄養的霊魂、(2)感覚的霊魂、(3)思考的霊魂と
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