漁村の伝統的な家庭料理の作り方を学ぶイベント「食の伝承～地元で獲れた魚のさばき方と郷土料理」がこのほど大田市静間町の静間まちづくりセンターであった。女性２０人が参加、漁業者の妻たちが指導役となり、獲れたての魚のさばき方から味付けまで「ふるさとの味」を伝授した。 同市の鳥井、長久、静間、五十猛各町で住民のまちづくり活動をリードする「西部まちづくり委員会」の主催。ＪＦしまね大田支所の協力で、前日に和江漁港（同市静間町）に水揚げされた剣先イカ、マトウダイ、カナガシラ、ホウボウなど季節の魚が提供され、イカめし、天ぷら、へか焼き、だきずしなど、和江地区で食卓にのぼる魚料理を参加者が作っていった。 三枚におろすのも初めてという若い参加者も多く、指導役の包丁さばきを見ながら、慣れない手つきながらゆっくり調理していた。近くの荊尾（かたらお）智子さん（３７）は「初めて作るものばかり。多く覚えたい」、同市久手

津波で多くの漁船が被害を受けた宮城県気仙沼市で、「漁業の復興に貢献したい」と、職人たちが仮設の造船所で船の修理を続けています。 仮設の造船所が建てられているのは、気仙沼湾に面し、今も周囲にがれきが残る浜です。職人たちが、津波で流されてしまった水産加工場の土地を借り、壊れた船の修理を続けています。 　「船を修理して、早く漁師たちが立ち上がり、また震災前のように生活できるようにしなければ」（造船業 高城実さん） 　船外機を修理する高城実さん。自らの造船所は流されてしまいましたが、「漁師たちに早く海に戻ってもらいたい」と、仲間２人とともに７月から船の修理を再開しました。これまで十数隻の船を直し、さらに２０隻ほどの注文があります。 　「（漁師たちには）お世話になった。震災にあったから（修理を）やめるなんてできない」（造船業 高城実さん） 　まだ電気も水道も通っていないこちらの造船所は、日が暮れれ

養魚用飼料で、業界シェア国内２位の総合食品メーカー、林兼産業（本社・山口県下関市、橋本鉄志社長）が業界初というマグロ稚魚用配合飼料の商品化に成功した。世界的に外洋マグロ漁獲量の見直しが進む中、「養殖マグロに活路を見いだす」と注目されている。マグロの稚魚は生き餌しか食べず、飼育に困難が伴った。飼料の商品化で外洋マグロの「資源保護」にもつながると業界も注視している。 現在、国内のマグロ養殖は外洋で稚魚を捕獲し、成魚になるまで育てるのが主流。しかし稚魚は硬い配合飼料を食べず、イカナゴなどの生き餌しか使えないため、コスト高となっている。何より生き餌だけでは、ビタミンなどの栄養分が不足し「半数以上が成魚にまで育たない」（同社担当者）状態だった。 新飼料「ツナッコ」（商品名）は、稚魚でも食べられるよう工夫した。当初は飼料の水分を増やすなど試みたが、稚魚の成長率が悪化。総合食品メーカーだけに「餌を食品と

明治三陸大津波（１８９６年）や昭和三陸津波（１９３３年）の教訓、痕跡を後世に伝えるため、気仙沼市内に建てられた津波記念碑３３基のうち、２２基に東日本大震災の津波が到達していたことが、市教委の調査で分かった。２２基のうち１３基は流失したり、倒壊したりした。碑は過去の津波の到達地点周辺などに建てられたとみられており、専門家は「今回の津波がいかに大きかったかを物語る」と指摘している。 （田柳暁） ◎過去の大津波、教訓伝承／「風化防止へ工夫必要」 ＜標語など記す＞ 　津波記念碑は津波災害の風化を防ぎ、注意を促すのが狙いとされる。３３基の地域別は、唐桑地区が１２基、気仙沼１４基、本吉７基。約２０基は昭和三陸津波の数年後、民間企業が募った義援金で建立され、標語や被災状況が記されていた。 　海から約８００メートル内陸にある気仙沼市波路上の地福寺は、明治三陸大津波で被害を免れた。今回の津波では、墓地にあっ

津波避難ビルに指定され、約４５０人が避難して助かった宮城県気仙沼市の気仙沼中央公民館＝３月12日撮影、東京消防庁提供 東日本大震災を受け中央防災会議の専門調査会が２８日まとめた最終報告は、津波対策の拡充が最大の柱だ。ハード・ソフト両面の対策を組み合わせることで、「５分程度で避難が完了するまちづくり」を目標に掲げた。実現すれば犠牲者は大幅に減らせるが、実現へ向けた課題も多い。【池田知広、八田浩輔】 ３月１１日、宮城県気仙沼市の気仙沼中央公民館の２階屋上には、住民ら約４５０人が避難した。同公民館は市が指定した「津波避難ビル」。津波は２階まで達し、火災も迫ったが、ヘリコプターなどで全員救助された。 同市は、浸水想定地域のどこでも５００メートル以内に津波避難ビルがあるよう、１５カ所を指定していた。東日本大震災では全て浸水したが、屋上まで水没した所はなく、２５００人以上の命を救った。 専門調査会が掲

松山市漁協が県産材魚礁を製作 漁業者の漁場保護・育成意識向上を図ろうと、松山市漁協（大木等組合長、正組合員１３６人）などでつくる「伊予灘松山地区海の種場つくり有志会」（会長・大木組合長）はこのほど、県産材を用いた魚礁５基を製作。来月から海底に設置し、漁場整備への実証事業を始める。 　同有志会は漁協のほか、松山流域森林組合（東温市）や松山市、兵庫県の魚礁製作・販売会社で構成している。魚礁の製作、設置は昨年から検討。本年度、水産庁の補助事業に採択され、交付金約３１７６万円を製作費用などに充てた。 　魚礁は計５基製作。スギ、ヒノキの各２基に加え、腐食した木材にはフナムシなどが付着し、それを狙いマダイなどが寄ってくるため、効果の比較検証用に木材を使っていない魚礁も１基製作した。

宮城県気仙沼市の湾で牡蠣（かき）・帆立養殖業に従事する傍ら、「森は海の恋人」をスローガンに漁師の植樹活動を先導してきた畠山重篤さん（６７）。豊かな漁場を守るためには、まず山と川を自然に近い状態に戻さなければならない－。その取り組みと信念を、数多くの著作に綴（つづ）ってきたエッセイストでもある。　東日本大震災の大津波により、父から受け継いだ養殖施設は全壊。牡蠣を育てるための筏（いかだ）はすべて沖へ流されてしまった。　あれから半年あまり。リアス式の静かな湾ではいま、真新しい筏が浮かび、その下で小さな牡蠣がすくすく育っている。　震災後、畠山さんらのもとに、意外なところから支援の手が差し伸べられた。フランスの高級ブランド、ルイ・ヴィトン。同社は三陸の惨状を知ると、あるエピソードを思い出したという。４０数年前、フランス名産のブルターニュの牡蠣がウイルス性の病気で壊滅状態に陥ったとき、宮城県産の種牡蠣

東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた東松島市宮戸のノリ養殖生産者らが２８日朝、松島湾で、全国からの支援ボランティアが作った養殖網を使って養殖を始めた。浮かせる網は約１１００枚。順調にいけば、１１月中旬には収穫できる見通しだ。 種がついた養殖網を海に入れ、竹をはめ込み、海に浮かべた。生産者の一人、尾形文秀さん（５６）は「ボランティアの皆さんの支援はありがたかった。誰かがやらないと、来年に続く人もいなくなる」と喜んだ。 震災で種をつける水車の機械や道具などが使えなくなったが、６月にはがれき撤去が進んだため、地区の２３人の生産者のうち１１人が養殖再開に前向きになった。さらに、夏にボランティアツアーで全国からかけつけた約１００人が、尾形さんらの指導のもと、長さ１８メートル、幅１・２メートルの養殖網を８００枚以上作って、再開を後押ししてくれた。 県漁業協同組合によると、今年、県内でノリ養殖

住宅地、浸水しない地域に 山田町は２８日、東日本大震災からの復興計画の素案を発表した。県が２６日に発表した山田湾の堤防（高さ９・７メートル）を前提に、今回の震災と同規模の津波でも浸水しない地域を住宅地とし、高台移転の候補地などは地区ごとに複数案を示し、今後、住民の意見を聞いた上で１２月にも策定する。 船越湾については、県が建設する堤防の高さがまだ決まっておらず、県と調整中の数値を基にした。 初めに、今回の震災と同じ津波（高さ１０・９メートル）が押し寄せた場合、新たな堤防を越えた津波が、どこまで到達するかを想定。その上で、浸水しない地域を住宅地に定め、浸水が予想される地域は高台移転を原則とし、跡地を工場や農地に活用する。 素案では、町内の沿岸部を６地区に分割。各地区ごとに、高台移転せずに盛り土で対処する地域や、高台移転の候補地などを変えて１～３案を用意した。１０月半ばまで地区ごとに住民説明会

市民「短すぎる」　気仙沼市 気仙沼市の震災復興計画案を巡り、市は２３日から市民意見の募集を始めたが、締め切りまで１週間しかないとして、市民から批判の声が上がっている。市は９月中に計画案を策定すると明言してきたため、スケジュールの遅れが意見募集の期間短縮につながった形だ。市は計画案をホームページ（ＨＰ）で公表したが、公民館などで閲覧できるようになったのは２６日から。市民向けの公聴会も開かれず、市民は困惑している。 市は当初、計画案に対する意見募集を１９日から始める予定だった。しかし、同日の復興会議で計画案に対する修正意見が相次いだため、計画案に修正を加えた上で、２３日に市のＨＰに掲載し、意見募集も始めた。その後、２６日からは公民館や市役所など１７か所でも計画案が閲覧できるようになった。 同市本吉町小泉地区で、市民レベルの復興計画づくりに取り組む加納保さん（５１）は、２４日に市のＨＰを開いて目

水温が高い黒潮の流入などによって瀬戸内海の潮位が上昇し、広島地方気象台は２８日、広島県江田島市に高潮警報を、県南部の沿岸市町に高潮注意報を発令、警戒を呼びかけた。 午前６時４０分に警報が出た江田島市では、同市大柿町大原の海沿いの市道２か所が数センチ冠水。注意報が出た呉市でも、沿岸の道路や港湾施設の一部が冠水したが、車の通行や住宅などへの影響はなかった。 一方、廿日市市宮島町の厳島神社では、回廊の一部が冠水したため、午前中の約１時間、一般客の拝観ができなくなった。 同気象台は「大潮の時期に重なっており、２９日も警報が出る可能性がある。満潮時に海に近づくのは控えてほしい」としている。

石巻・秋の風物詩「明暗」　巻き網サバが復活　シカの角切り中止 巻き網船が入港し初めてサバを水揚げした＝２８日午前８時２０分ごろ、石巻漁港 ◎主役登場、市場に活気 　宮城県石巻漁港に２８日早朝、巻き網漁船が入港し、震災後初めてサバを水揚げした。石巻魚市場にとって、巻き網サバは秋漁の主役だった。桟橋をフォークリフトやトラックが忙しく走り回り、市場はにわかに活気づいた。 　茨城県船籍の巻き網運搬船「第５６石田丸」（２４０トン）がかさ上げ工事が終わったばかりの本港岸壁に接岸。八戸沖で捕れたゴマサバ主体の１７０トンを水揚げした。 　震災後、１隻で１００トン以上を水揚げするのも同市場では初めて。冷凍設備の復旧が進んでおらず、全量を買い支えられるかどうか不安視する関係者も多かったものの、１キロ１０２～７０円とまずまずの値段で取引された。 　魚市場の須能邦雄社長は「皆さんの協力で何とか受け入れることができ

東京都は二十八日、東日本大震災で被災した岩手県宮古市のがれきを受け入れ、都内で処分すると発表した。十月下旬から十一月にまず一千トンを処理し、来年三月までにさらに一万トンを引き受ける。三十日に都と県、都環境整備公社が基本協定を結ぶ。東北地方以外の自治体が被災地のがれきを受け入れるのは、初めてという。 対象は木くずや鉄くず、プラスチックが交じった「混合廃棄物」で、宮古市磯鶏の仮置き場から鉄道貨物で搬送。都内の民間産廃処理施設で分別、破砕・焼却し東京湾に埋め立てる。宮古市にはがれきを分別するスペースなどがなく、処理を依頼された。

【徳島ニュース】  ◇「異常潮位」聾学校が浸水　徳島市、排水路から逆流     ◇県議会棟でコンサート　来年９月国文祭、機運盛り上げ　     ◇独自に防災マップ作成　津田新浜地区住民　　     ◇漁場の流木を回収　和田島漁協、１５０人４５隻参加　     ◇上勝バイオ助成可決　町議会、おが粉損失で４４００万円　     ◇県内初「郷土の森」に　つるぎ一宇の津志嶽国有林　     【徳島ニュース】  ◇「異常潮位」聾学校が浸水　徳島市、排水路から逆流     ◇県議会棟でコンサート　来年９月国文祭、機運盛り上げ　     ◇独自に防災マップ作成　津田新浜地区住民　　     ◇漁場の流木を回収　和田島漁協、１５０人４５隻参加　     ◇上勝バイオ助成可決　町議会、おが粉損失で４４００万円　     ◇県内初「郷土の森」に　つるぎ一宇の津志嶽国有林　     【徳島ニュース】  ◇「異常

９月中旬、米ロードアイランド州ニューポートを訪ねた。ボストンから南へ１００キロ。軍港とロブスター漁で知られるこの町で、かつてアメリカスカップが開催されていた。カップを保持していたニューヨークヨットクラブは世界各国からの挑戦を受け、１９８３年まで１３２年間も防衛してきたのだ。　同クラブは８４年に設立され、現在もマンハッタンに本部がおかれている。別館といえるニューポートにはクラブハウスがあり、実際にヨットレースが開催されるのもこの場所。クラブハウスには、こぢんまりとしたバーとレストラン、宿泊施設があり、クラブ員関係者だけが利用できる。小高い丘の上に立つクラブハウスからは、ニューポートの湾が一望でき、芝生にならべた椅子に座って湾を走るヨットを眺めるのがヨットクラブのステイタスだ。　湾から大西洋側に向かうとマンションと呼ばれる豪華絢爛（けんらん）な豪邸が立ち並ぶ。２０世紀前までのアメリカ産業、石炭

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アカガイの重みに喜び　仙台で底引き網漁が操業一部本格再開 アカガイを水揚げする佐藤吉男さん（右）＝２８日午前１０時ごろ、仙台市宮城野区の仙台港 東日本大震災で９割を超える漁船が失われた仙台市で、出漁を見合わせていた漁業者が操業を始めた。再開したのはアカガイの底引き網。出漁しているのは１隻だけだが、海の男たちは漁に出る喜びをかみしめている。 　漁を再開したのは若林区荒浜の佐藤吉男さん（７７）。アカガイ漁が解禁された今月初めから貝毒や放射能の測定のための試験操業を重ね、中旬にいったん出漁。その後、天候不順などで出漁を見合わせていたが、２５日から本格操業に入った。 　２８日も弟の武さん（６９）＝宮城野区蒲生＝とともに、所有する「大吉丸」で出漁。船を係留する仙台港（宮城野区）を出港し、約３時間半でアカガイ約３０キロと１０キロほどのツブ貝を水揚げした。 　吉男さんは震災で自宅と漁具倉庫のすべてを流失

志摩市の県水産研究所は、真珠養殖で使うアコヤガイの自ら貝殻を閉める力（閉殻(へいかく)力）を、荷重計で測ることで優良な貝を選別する方法を開発し、特許を取得したと発表した。閉殻力が強いほど、死ぬ率が低く、良質の真珠を作る傾向にあることに着目し、同研究所は「近い将来、真珠養殖の現場で普及させ、生産性の向上を図りたい」と話している。（中村和男） 養殖真珠の品質を高めるには、優良なアコヤガイを用いることが重要だが、貝の健康状態は外観だけで判別することが難しい。そのため、同研究所は三重大大学院生物資源学研究科と県産業支援センターと共同で、閉殻力を測定することで効率的に養殖できる方法を探った。 アコヤガイは夏場の高水温の時期に死ぬことが多いため、実験は夏季に１か月間実施した。閉じた貝殻を１センチこじ開ける力を約３０秒間測定した結果、貝が死ぬ率は、１重量キロの閉殻力では８０％だが、３重量キロでは２１％、

県内最大のカキ養殖地、鳥羽市浦村町で２５日、今シーズンのカキの水揚げが始まった。同地区では、約８０の業者が１２５０基のいかだで養殖を手がけ、県内のカキ生産量の３分の２を占める。今年３月に起きた東日本大震災による津波で養殖いかだの約半数が損壊したが、水揚げ量は昨年の３～４割減にとどまり、３０００～３５００トンの出荷が見込まれている。 この日、養殖業者がヒノキの間伐材を組んだいかだにつるした約７メートルのロープを海中から巻き上げて、１年かけて育てたカキを次々と船に水揚げした。近くの作業場でむき身にされ、関西、中部圏に出荷される。