イリジウムフレア コメント欄に追記 - ビームしておくれ、祖師谷へ

築三十年、来年には取り壊しが決まっている木造モルタルの下宿に兄がやってきたのはこの冬のことだった。しかも子供まで連れて。たたき兼玄関に腰を据えると兄はこう言った。「いやひでえおんぼろだな。こりゃ来年まで持つのか？」「持たないから取り壊すんでしょ。で用件は何、兄さん」兄は頭をボリボリとかきながら言いにくそうに答えた。「だから帰って来いだとよ」「誰が？」「うーん」またもや言いにくそうにする。「そりゃ悪いと思ってるよ。でもなあ、いい加減折れてくれよ」「それで子供まで連れてきたの？卑怯よ。宗教の勧誘と一緒じゃない」「仲を引き裂いたのは悪いと思ってるって、さ。あれでナイーブなんだからさうちの親御どのたちも」「悪いと思ってるのなら認めてよね」「わかった、わかったって。俺も協力するから」私は意地悪そうに言う。「子供引き連れて？」兄も引きつった笑いを貼り付けて答える。「そ、子供にめっぽう甘いからな、父さん