FILM 「サタンタンゴ」（タル・ベーラ）

タル・ベーラ監督作「サタンタンゴ」のレビューです。 冒頭、寒々としたモノクロ映像に大量の牛が鳴く姿が映し出され、そこから長回しによる悪魔的な映像が紡がれていく。 ７時間３０分という一般的には考えられない長さのこの映画は、全編がわずか１５０カットと異常に少なく、その代わりに異常なまでの長回しを多用して描かれた（語り的な意味で）円環構造を持つ映画です。 この映画は至るところに説明が放棄された象徴がばらまかれていて、観客は長回しのゆったりとした時間の中で自らストーリーを紡いでいくことを強制されます。 一つのカットに１０分近く費やすのが普通のこの映画では考える時間が大量に与えられています。 しかしこの映画の長回しはあまりに長いため、観客にその場にいるかのような印象を強く与えてしまう。 だからこの映画をじっと見つめるということは、単純には割り切れない複雑怪奇な現実世界への没入であると表現してもいいん

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