なぜ戦争を研究し、小説を書くのか 温又柔氏、加藤陽子氏対談 | 毎日新聞

「女性の小さな体で感じる恐怖が原点」――。日中戦争期の歴史を研究する加藤陽子東京大教授と台湾生まれ「日本語育ち」の作家、温又柔さんの対談。下は、戦争の歴史を研究する意味や小説が描く普遍性など、二人の仕事について語り合い、若者へのメッセージへも話題が広がった。【構成・鈴木英生】 なぜ、人は戦争に突き進むのか ――加藤さんは、なぜ近代日本の戦争を研究されてきたのでしょう？ 加藤さん 自分の体が小さいからこそ感じる、怖さが原点です。どんな理知的な男性にも、酔って理性を失った瞬間などに恐怖を感じる。連想すると例えば、日本のよき父や夫、兄や弟たちが、日中戦争で「南京を陥落させたら帰れる」と言われて戦闘と行軍を続けたあげく、「まだ帰れない」とはしごを外された瞬間に何をしてしまうのか……。そのような直感から、なぜ人は目の色を変えて戦争に突き進んでしまうのか、例えば、なぜ戦前の日本人は中国を徹底して敵だと

[egamiday2009]

“戦前期でも、「英米をたたけ！」として陸軍の機密費をもらって動く人はいましたが、問題はその周辺に反英米こそが正しいと信ずる多くの人々がいて、「そのとおりだ」という雰囲気が社会を覆ってしまう。”