時代の風：揺れる欧州の対中政策 競争と協力の均衡模索＝高原明生・東京女子大特別客員教授 | 毎日新聞

4月末以来、滞在中のベルリンでは素晴らしい好天に恵まれるようになった。だが、欧州を取り巻く国際情勢の推移は、のどかとは言えない。安全保障と経済にとって重要な大国との関係が先行き不透明であり、欧州内部の結束にも影響が及びかねないからだ。 現下の焦点は中国との関係だ。4月のショルツ独首相の訪中に続き、5月には習近平国家主席がフランス、セルビア、ハンガリーを訪れた。セルビアとハンガリーは欧州で例外といえる親露、親中の国であり、そこでの大歓迎は習氏の国内での威信を高める上でプラスになっただろう。 他方、欧中関係にとって重要だったのは、マクロン仏大統領、そしてフォンデアライエン欧州委員長とのパリでの会談だった。最近の欧中首脳外交を通して浮き彫りになったのは、安全保障と経済とのジレンマに揺れる欧州の姿に他ならない。