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しかし、マレーは、現在の知識人は、それを忘れてしまっているのではないかと懸念する。伝統的な文化や... しかし、マレーは、現在の知識人は、それを忘れてしまっているのではないかと懸念する。伝統的な文化や宗教、連帯意識、信頼感が、自由民主主義社会の存立を支えるものだということを理解し損なっている。そう警鐘を鳴らすのだ。 伝統的な文化や宗教として、マレーの念頭にあるのは、むろん、キリスト教を軸とする欧州の伝統であり、文化・道徳である。つまり、「古代ギリシャとローマから生まれ出で、キリスト教に影響を与えられ、啓蒙思想の炎によって精錬された欧州社会」(同書401ページ)の伝統であり、文化である。 だが、マレーによれば、現代の欧州の知識人、特に西欧の知識人は、西洋文化は帝国主義や植民地主義を生み出したものだという批判を過度に受け入れてきたため、自分たちの文化に対する自信を失っている。「自虐的」と言ってもいい状態にある。そして、「知性と教養ある人々は、自分たちが育った文化を支えたり守ったりすることなく、む