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『ジェントルマン』 山田詠美著 : 書評 : 本よみうり堂 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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『ジェントルマン』 山田詠美著 : 書評 : 本よみうり堂 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
冒頭は静かな気流に乗ったような気分で淡々と読めた。主人公が二人いる。 うららかな日だまりで自然に湧... 冒頭は静かな気流に乗ったような気分で淡々と読めた。主人公が二人いる。 うららかな日だまりで自然に湧き上がる水のように、誰もが求め愛する漱太郎。かたわらに、ひたすら振り向かれることだけを望み、憧れと焦燥にさいなまれるかつての同級生、夢生(ゆめお)がいる。夢生は汲(く)み上げられた蛇口の水みたく、メリハリのある味わいを自分では出せない。漱太郎と交わることによって、はじめて生き生きとした深い喜びを感じる。語るのはこちら、憧れと服従の間を往(い)き来して懊悩(おうのう)する夢生の方である。 漱太郎は育ちもよく妻子持ち、一見非の打ちどころのないイケメン銀行員だが、こっそり無抵抗な人に非道(ひど)い仕打ちを繰り返している。一般社会の評価とは真逆に、表だけ美麗な卑劣で空っぽな男である。 一方の夢生はゲイで一人暮らし、売春という人に言えない過去を背負っているが、自分の過去と現在について隠し立てをせずに小さ