「フルセットの試合は喜んでプレーしてます。第4、第5セットになると集中力が増す」と試合後に錦織圭は語った。 スタニスラス・ワウリンカ(スイス)のフォアハンドがネットに掛かると、錦織は握り拳を作り、“どうだ”という顔で勝利の味を噛みしめた。 午後3時過ぎの試合開始から、4時間15分。スタジアムの上に広がっていた爽やかな秋空は、とうに薄墨色になり、照明灯がコートを昼間と変わらぬ明るさに保っていた。 錦織がまたも日本テニスの歴史を塗り替えた。全米で日本男子が4強に入るのは、1918年の熊谷一弥以来96年ぶりの快挙だ。 「最後はどうやって終わったか、覚えていないんです」 試合直後のコート上でのインタビューで、錦織は苦笑した。 世界ランク4位はさすがに手強かった。過去2度の対戦は、ともに錦織の完敗。名前をもじって「スタニマル」と呼ばれる猛獣のような相手と、最後までどちらに転ぶか分からない緊迫したラリ