『現代美術史』著者・山本浩貴に聞く「コロナ時代の(と)アート」「社会と芸術」の視点から第二次大戦以降の西洋と日本の美術を総覧した『現代美術史 欧米、日本、トランスナショナル』(中公新書)を昨年上梓した山本浩貴。気鋭の文化研究者の山本に本書の狙いと「コロナ後」のアートに対する見解を聞いた。 聞き手=永田晶子(美術ライター) 山本浩貴 「美術史を複数化する」意識──手に取りやすく、かつ本格的な現代美術史の入門書は本書が国内で初めてではないかと思います。山本さんは1986年生まれで、正直その若さに驚きました。まずはその出版の経緯を教えていただけますか。 留学先であったロンドン芸術大学博士課程在学中にサントリー文化財団の若手研究者対象の研究助成に応募し、2016年度の助成をいただきました。その中間報告会が東京で行われ、そこで出版元の編集者と話したのがきっかけです。当初は90年代以降のいわゆるソーシ