一般に、地図の用途といえば、経路や地形を調べることだ。旅の手引きともなる。だが、歴史を振り返ると、こうした用途ばかりではないことがわかる。 ーーアン・ルーニー『地図の物語』 かつて地図が小説に似ていた時代があった。 「地図」といえば、今ならメルカトル図法の地図やGoogle Mapが思い浮かぶ。これらの地図は世界共通で、国や人や文化によって変わるものではない。 しかし、世界共通の地図になったのは、ここ数世紀のことだ。人類の歴史の長いあいだ、地図は独創的で個性的な、想像力の住処だった。 本書は、紀元前から21世紀まで、人類が残してきた世界中の地図140点をフルカラーで紹介している。 本書を読んでいると、古代の地図は現代よりもずっと多様で独創的だったことがわかる。 たとえば、アステカ文明の地図には、地形だけではなく、歴史や文化の情報、つまり「積み重ねた時間」の情報が描かれている。 マーシャル諸