町内会・自治会というありふれたコミュニティの歴史を繙くことで、日本社会の成り立ちを問いなおす、玉野和志さんの新刊『町内会―コミュニティからみる日本近代』(ちくま新書)。同書の書評を、社会学者の小熊英二さんにお書きいただきました。『ちくま』7月号から転載します。 自治会・町内会は、都市部の多くの人には縁遠い。しかし例えば大阪府箕面市は「自治会に入っていないと、災害時のセーフティネットから外れてしまいます」「復旧までの情報提供や支援物資の配布などは、優先的に自治会を通して行います」と広報している(箕面市「災害に備えて自治会に入る!」)。 それはなぜか。日本は公務員が少なく、自治会・町内会なしには行政事務がこなせないためだ。日本は二〇二一年の全雇用に占める公務雇用比率がOECD平均の約四分の一である(Government at a Glance 2023)。日本は官僚の存在感は大きいが、現場で働