近海の海底に巨大地震の巣を抱える日本列島は、大津波から逃れられない宿命にある。そのとき、人々はどう避難すればよいのか。その街の人たちが避難場所を目指していっせいに歩き出したとき、限られた時間でほんとうにそこまでたどりつけるのか。その「限られた時間」とは、具体的に何分なのか。最近は、コンピューターの高性能化を背景に、かなりリアルな避難行動のシミュレーションができるようになってきた。大津波からの避難は、失敗が許されない一回限りの集団行動だ。津波が来たら、人にかまわずとにかく自分で逃げろという「津波てんでんこ」。科学はいま、この言い伝えを乗り越える試みを続けている。 避難の「難所」を明らかにする大規模シミュレーション 海底を震源とする巨大地震が発生すると、海底の地盤の大きなずれが海面に伝わり、それが大津波となって四方八方に広がっていく。日本近海でこの巨大地震が起これば、それが日本列島を襲う。20