日本の伝統芸能のひとつである文楽をご覧になったことはあるだろうか? 本書は一般的には〈難解〉〈敷居が高い〉といったイメージがある文楽を、色々な工夫を凝らして多角的にその魅力と仕組みについて紹介している。 その伝えようとする熱量がとにかく凄い。正式には〈人形浄瑠璃文楽〉というように、文楽の構成要素である人形・義太夫・三味線の説明から、舞台がどのように作られているか、物語の舞台となる江戸時代の価値観までをイラストや4コマ漫画を使ってポップに楽しく描かれている。 さらに文楽通であるロバート・キャンベルへのインタヴューや、本書の監修も手がける文楽の太夫である竹本織太夫と声優の石川由依との〈声〉を生業とするもの同士の対談、なかでも秀逸だったのは、精神科医の名越康文が14歳頃から出会う人間関係の悩みや自分自身の悩み、社会への疑問などを文楽の演目を題材にして答えるエッセイだ。 ここで相談される悩みは思春