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ブックマーク / antimainstreameconomics.blogspot.com (264)

  • 社会科学の裸の王様・経済学 1 はじめに

    アダム・スミスの『諸国民の富』(1776年)の出版から237年。この間、様々な経済学が構築されてきました。 しかし、経済学を研究し、教えている者がこう書くと、自らの営業に対する妨害のような気持ちもしますが、実は現在大学で教えられている経済学、社会で流通している経済学の理論にはきわめて大きな(致命的ともいえる大きな)問題、欠陥があります。もちろん多くの優れた経済学者がそのことに気づいており、言及してきました。例えばケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』(1936年)は、当時の主流派=(新)古典派の経済学が「現実離れした想定」に依拠しており、したがってそれに沿って政策が実施されたならば、「悲惨な結果」がもたらされると述べることから始まっています。 この欠陥は、現在でも取り除かれたとは到底言えません。 もちろん理論には抽象性がつきものです。そして、抽象とは複雑な現実を単純化することですから

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    gruza03 2014/01/13
    実は現在大学で教えられている経済学、社会で流通している経済学の理論にはきわめて大きな(致命的ともいえる大きな)問題、欠陥があります。
  • 失業率の上昇を説明する その8 カレツキの「政治的景気循環」

    カレツキの政治経済学 〜 企業家は完全雇用を好まない ケインズが20世紀の最も優れた経済学者であることは言うまでもありません。 しかし、そのケインズの経済学の核心部分(有効需要の原理)を先取りした経済学者がいました。それがミハウ・カレツキです。しかし、カレツキは、ポーランド出身の経済学者であり、また初期の作品はポーランド語で発表されていたため、英語圏ではよく知られていませんでした。 ケインズとカレツキには、出身と言語だけでなく、出発点となった経済学の面でも相違があります。簡単に言えば、ケインズはイギリスの(新)古典派経済学から出発し、新古典経済学を自己批判する形で経済学を革新しましたが、カレツキは、マルクス派の経済学から出発し、ケインズと同じ経済理論に到達しました。つまりカレツキは、最初から新古典派の経済学の外部にいたことになります。 こうした相違は、ケインズとカレツキの2人が同じく「ポス

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    gruza03 2014/01/08
    カレツキは、この歴史的妥協が資本主義体制を修正し、安定化に貢献することを見ていましたが、それと同時に企業者の嫌うところだということも見抜いていました。
  • 失業率の上昇を説明する その7

    摩擦的失業は存在するのか? またどの程度なのか? 前に説明した雇用率の関数( ε=(Y/L)/r・t ) は、より現実に近づけるためには、若干修正しなければなりません。 その一つの理由は、いわゆる摩擦的失業にあります。 摩擦的失業とは、ある地域や産業(A)では失業者がいるとしても、別の地域・産業(B)では労働力が不足しているような場合、AからBに労働力が移動できれば、失業率が低下するのに、そのような移動を妨げる「摩擦」が存在するため、失業が生じるようなケースを想定しています。 言うまでもなく、抽象理論上はもちろん、現実にもそのような「摩擦」の存在を完全に否定することはできないでしょう。そのような事情を想定して、「雇用ミスマッチ」という言葉も存在します。ミスマッチを解消できれば、失業率が低下するという含意がその背後にはあります。 しかし、摩擦的失業またはミスマッチは、どの程度に存在するのでし

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    gruza03 2014/01/08
    1980年代の高失業は、サッチャーのマネタリズム政策(デフレ政策)やボルカー・レーガンの金融引締政策(デフレ政策)の結果であり、2008年末以降の高失業は、グローバル金融危機の結果です。
  • 賃金低下の動かざる証拠 就業構造基本調査から

    1997年から現在(2012年)までに賃金がどのように引き下げられたかは、厚生労働省の労働力調査と就業構造基調査から明白です。 まず「労働力調査」から。雇用形態の変化がわかります。言うまでもなく、この15年間に男女とも非正規雇用の絶対数も割合も増加しています。 次が「就業構造基調査」。雇用形態(正規・非正規)・所得区分別の従業員数の変化が分かります。ここでは1997年から2012年の変化をパーセントで示します。20歳代と30歳代の統計を男女別のグラフで示しておきます。 どの年齢層でも男女とも正規から非正規への移動、高所得から低所得への移動が一目瞭然です。 ただし、30歳代女性の場合には、ちょっと注意が必要です。ここでは、やはり非正規雇用の比重が増えていますが、非正規の中では99万円以下の所得区分の人数が減少して、100万円〜299万円のところが増加しています。非正規雇用の低賃金、かつ長

    賃金低下の動かざる証拠 就業構造基本調査から
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    gruza03 2014/01/08
    非正規雇用の低賃金、かつ長時間労働によって所得を増やそうとしている30代の女性が増加しているという姿が浮かび上がってきます。
  • 失業率の上昇を説明する その6 OECDのひどい勧告

    賃金を引き下げれば失業者が減るという新古典派の労働市場論がまったく現実離れしている代物だということは既に繰り返し説明してきました。ところが、あろうことか1994年にOECDという国際組織がその新古典派の労働市場論にもとづいた「職の研究」(Job Study)なるものを公表し、さらにその後、それにもとづいて様々な雇用流動化(つまりストレートに言えば、労働条件の悪化、または悪化を可能とするような制度の創出)の「勧告」を行いました。日も1996年に勧告を受けています。 これに対して、世界中で様々な抗議が生じました。まずOECDの内部からTUAC(労働組合諮問委員会)が「異例の」反論を出しました。その内容の要点は、「勧告」が単に賃金をはじめとする労働諸条件を引き下げるだけに終わり、雇用状況の改善(失業の減少など)をもたらさずに終わるだけだというものです。このあたりの事情については、石水喜夫氏の『

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    gruza03 2014/01/08
    すなわち雇用流動化は労働諸条件を悪化させる(またはさせた)だけであり、失業率の低下には何ら役立っていないことを明らかにしています。
  • 失業率の変化を説明する その4 ゼロ成長でも労働生産性が上昇する理由

    もし成長率がゼロでも、労働生産性の上昇率がゼロならば、雇用量=労働需要が減少する心配はない。しかし、先に述べたように、ほとんどの場合、ゼロ成長でも労働生産性は上昇し、そこで労働需要は低下することになる。 それは何故だろうか? まず考えられるのは、労働生産性が労働の強度に関係していることは明らかであり、景気後退時・停滞時には労働密度が強化されると考えることができる。しかし、労働密度は短期的にはともかく、長期にわたって継続的に強められると考えることはできない。そこには自ずから限度があると考えるべきである。 おそらく労働生産性の上昇は、機械・生産設備等の改善を通じた技術水準の上昇やそれにともなう熟練度の改善によると考えるべきである。すなわち労働生産性の上昇は、かつて E.Domar が示したように、設備投資に伴って生じると考えられることができる。そして、産出量がゼロ成長の状態にあっても、設備投資

    失業率の変化を説明する その4 ゼロ成長でも労働生産性が上昇する理由
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    gruza03 2014/01/08
    おそらく労働生産性の上昇は、機械・生産設備等の改善を通じた技術水準の上昇やそれにともなう熟練度の改善によると考えるべきである。
  • フリードマンの苦しい言い訳

    このブログでも何回も書いてきたように新古典派(米国の主流派)の経済学は、いくつかの非現実的な公準(仮定、前提)にもとづいています。 ケインズが『一般理論』(1936年)で問題としたように、①規模に関する収穫逓減(ただし最終的にケインズは、これに妥協しました)、②労働者側の労働時間の限界負効用の逓増、③セイ法則(供給はそれ自らの需要を創り出す)、④ミクロ→マクロの因果関係(逆を認めない)、⑤その他、などがそれです。 多くの場合、この学問的批判に対して新古典派は黙りを決め込むことが多いのですが、時として反論することもあります。その一つを取り上げましょう。 あるときマネタリストのミルトン・フリードマンが苦し紛れに次のように言ったことがあります。つまり、物理学でも、アインシュタインの言っていることは現実離れしているではないか、と書いたのです。確かに、素人ながら、アインシュタインの物理学(特殊相対性

    gruza03
    gruza03 2014/01/06
    ①規模に関する収穫逓減(ただし最終的にケインズは、これに妥協しました)、②労働者側の労働時間の限界負効用の逓増、③セイ法則(供給はそれ自らの需要を創り出す)、④ミクロ→マクロの因果関係(逆を認めない)
  • 日本の異常な経済状態 賃金の長期的低下の持続

    では、1997年以降、従業員の給与総額(貨幣額)が絶対的に減少してきた。もちろん、それとともに一人あたりの給与額も低下している。 このように書くと、不景気なのだからしょうがない、という人がいるかもしれない。確かにそうかもしれない。しかし、次の2つのグラフを見て欲しい。これらは2つとも財務省の「法人企業統計」から作成したものである。れっきとした政府の公式統計である。

    日本の異常な経済状態 賃金の長期的低下の持続
    gruza03
    gruza03 2014/01/06
    言うまでもなく、経常利益は、大ざっぱには経済学でいう「利潤」に相当し、そこから法人税が支払われ、残余は配当(株主の所得)、企業の内部留保(投資資金として使われる)などに分かれる。
  • 失業率の上昇を説明する その5 ケインズとマルクス

    新古典派の労働市場論が現実離れした理論であることは、先に示した。それは失業をなくすために実質賃金の引下げを求める。そして、実質賃金の引下げは、結局、(簡単のために物価が一定とすると)貨幣賃金の引下げを伴わなければならない。しかし、そのような貨幣賃金の引下げは、新古典派の想定に反して、むしろ失業を拡大する。 しかし、たとえ新古典派の雇用理論が間違っているとしても、個別産業や個別企業がより低い賃金を求めていることは事実である。市場競争の条件の下で、価格や賃金率に関して、他の産業や企業がまったく等しい状態にとどまるならば、当該産業・企業の賃金引下げと価格引下げの行動は、その企業の販売量を増やし、当該産業・企業を利するからである。とはいえ、一社だけ、一産業だけがそのような利益を得ることはありえない。すべての企業が他のすべての企業に対して競争関係にあるからである。 このような分裂、すなわち個別産業の

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    gruza03 2014/01/06
    たとえ新古典派の雇用理論が間違っているとしても、個別産業や個別企業がより低い賃金を求めていることは事実である。
  • 失業率の変化を説明する その3 失業は労働者の責任ではない

    多くの普通の人は知らないと思うが、実は、経済学(ただし主流派、新古典派の経済学)では、多くのよからざる事柄が労働者の責任とされており、しかもその考え方が政治家(ただし多くは保守的な政治家)によって採用されている。この見解は現実離れした前提に依拠しており、それゆえ現実離れいているが、<巨大企業にとっては>薬にもならないが、毒にもならないので放置・許容されている。 そのような見解の一つは、インフレ(物価水準の上昇)を労働者の責任とするNAIRU(インフレを加速しない失業率)の理論でる。この理論では、インフレを加速しないように一定以上の失業率があるできであるといい、高失業率を認めるどころか、むしろ求める。この思想は例えばFRBバーナンキ議長も保持しており、日も参加している仲良クラブのOECDの統計にもその数値が掲載されている。 もう一つは、労働保護立法などで労働者保護を行うと実質賃金が<均衡水

    失業率の変化を説明する その3 失業は労働者の責任ではない
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    gruza03 2014/01/06
    百歩譲って新古典派の論理にもとづいた場合でも、せいぜい実質の消費支出(有効需要)は不変であるという結論が導かれるだけである。つまり、貨幣賃金の引下げは、雇用を拡大させないことになる。
  • 失業率の変化を説明する その2 不思議な日本

    出典)Groningen University, the Centre for growth and Development, Economic Growth dataより作成。失業者については、一部、Ameco online databaseを利用。 ここでは、イギリスとフランスを素材として、かつ雇用率の変化の側から説明しよう。上図で、雇用率(ε)の変化率(対前年度比)は、実線の折線で示されている。プラスが雇用率の上昇を、マイナスが雇用率の低下を示す。 前回示したように、雇用率は産出量の増加関数である。この図でも産出量の増加率が高い年には、雇用率も好転していることが示されている。 しかし、産出量が唯一つ雇用率を決定する要因ではない。労働生産性(ρ)も大きく影響する。しかも、それ自体としては(つまり労働生産性の上昇がそれ以上の産出量の増加をもたらさない場合には)マイナス要因である。この労働

    失業率の変化を説明する その2 不思議な日本
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    gruza03 2014/01/06
    ワークシェアリングを通じて一人あたりの労働時間を縮小するしかない。ただし、その場合、純投資をゼロにしても、減価償却分に等しい投資(粗投資)は行われるので、何らかの技術革新は可能である。
  • 失業の変化を説明する その1 分析ツールの確認

    主義経済(企業が労働者を雇用する企業家経済)では、失業が存在します。 なぜ失業が存在するのでしょうか? それは、企業の雇いたい人数(労働需要)が企業に雇われたいと思う人数(労働供給)より少ないからです。いま前者をN、後者をLとすると、失業者 UNE は、次の式で示されます。 UNE=LーN そこでマクロ的には(社会全体では)、失業は、LとNの両方を説明することによって完全に説明されることになります。 とはいえ、L(労働供給)を説明するのは、非常に難しいことです。それはまず人口に関係していますが、人口がどのように決定されるかを正確に説明できる人(経済学者)はいないでしょう。人は生まれてから少なくとも15年ほどたたなければ、労働力になることができません。また例えば15〜25歳の人口にしても、すべてが労働を希望するわけではありません。中等教育や高等教育を受ける人もいれば、疾病・障害で働くこと

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    gruza03 2014/01/06
    人口がどのように決定されるかを正確に説明できる人(経済学者)はいないでしょう。人は生まれてから少なくとも15年ほどたたなければ、労働力になることができません。
  • トンデモ経済学 その4 ケインジアンよ、お前もか!?

    しかし、おかしいのはマネタリストのフリードマンだけではありません。 自然失業率の思想は、なんとアメリカ・ケインジアン(新古典派総合、ニュー・ケインジアン)によって受容されました。そもそもケインズから見れば、彼らの経済学の90%はケインズ経済学とは似て非なる非現実的な想定の上に立つ新古典派の経済学(市場均衡経済学)に他なりませんでしたが、それでもこれは驚きです。 4 新古典派・マネタリストの「自然失業率」の思想は、アメリカ・ケインジアンによって「インフレーションを加速しない失業率」(NAIRU)の思想にまで「進化」を遂げます。 NAIRU は、Non-Acceralationing Inflation Rate of Unemployment の省略形です。この思想は、読んで字の如し、です。それはフリードマンの思想を受け継いでいます。つまり、低失業のもとでは労働者の交渉力が強くなり、必ず貨幣

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    gruza03 2014/01/04
    R・ポーリン氏などが明らかにしたように、米国の労働者の平均実質賃金率は最近40年間に7%も低下しているのです。ここからみても賃金は断じてインフレの原因ではないことは明らかです。
  • トンデモ経済学 その3 フリードマン氏の理論のアホらしさ

    フリードマンの自然失業率(NRU)とは何か? それは質的に新古典派の労働市場論から来ている。 新古典派の労働市場論とは、大学の労働経済学でよく教えられている「マーシャリアン・クロス」の労働市場版である。 それは、まず縦軸に実質賃金率、横軸に労働量をとり、次に右下がりの労働需要曲線と右上がりの労働供給曲線を書き、その交点を均衡点と考える、あの図である。 交点(w/p、N)は、実質賃金率がw/pのとき、労働需要量=労働供給量=Nだということを示す。この時、失業は存在しない。なぜならば、失業=労働供給ー労働需要 であり、この場合には NーN=0 だからである。 しかし、現実にはいつも失業が存在している。これはどのように説明されるのか? 新古典派の労働市場論は、政府の労働保護立法や、労働組合の存在のために、実質沈吟率が均衡水準より高いからだと説く。この時、労働供給量(時間)が労働需要量(時間)を

    gruza03
    gruza03 2014/01/04
    物価上昇=インフレを労働者の責任にするために、失業率が低いときに貨幣賃金率が大幅に上昇すると主張する。ところが、自然失業率の理論では、実質賃金率が高いときに失業率が高まると主張している。
  • トンデモ経済学 その2 経済学の進化、それとも退化?

    前回述べたことをまとめると、インフレーションは、失業率が低いときに労働生産性の上昇率を超えて貨幣賃金が引き上げられるから生じるのであり、要するに労働者の責任であるという見解だということにになります。 低失業率→貨幣賃金の大幅引き上げ→インフレ この結論を覚えておきましょう。 3 ところが、「物価版フィリプス曲線」はさらに改変させられることになります。 改変を行ったのは、フリードマン(Milton Friedman)という経済学者です。 彼は、短期的には「物価版フィリプス曲線」が成り立つとしながらも、長期的には(つまり半年とか1年を超える期間では)成立せず、「物価版フィリプス曲線」は、垂直になると主張しました。つまり、ある一定の失業率のところで垂直になるというわけです。 ここで問題は、(1)当に「長期の物価版フィリプス曲線」が垂直になるのか、(2)それはどのようなことを意味するのか、という

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    gruza03 2014/01/04
    フリードマンは、彼の「理論」を使って、結局(つまり半年後などの長期には)物価が上昇し、失業率も元(自然失業率)の8%に戻っているはずだ、と言う訳です。
  • トンデモ経済学 その1 馬鹿と天才は紙一重

    経済学者、特にノーベル経済学賞(正確にはノーベル記念スウェーデン銀行賞)を与えられるような経済学者は、難しい(どれほど難しいのか私にはわかりませんが)数学を駆使して理論を組み立てるのですから、きっと頭がよいはずです。 しかし、彼らが現実の経済社会を説明する段になると、<馬鹿じゃないの>と思うことがしばしばあります。今日はその一例を紹介することにします。 1 出発点として「フィリプス曲線」から始めます。 フィリプス曲線というのは、縦軸に貨幣賃金の上昇率をとり、横軸に失業率をとったときに描かれる曲線(関数関係)です。(下図参照) このような図を描くためには、貨幣賃金率と失業率に関するデータが必要ですが、イギルやフランス、ドイツ、米国については、1950年頃までに様々な人(統計家)の努力によってそれらのデータが集められてきました。イギリスのデータは、1861年から利用可能となっています。これらの

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    gruza03 2014/01/04
    「物価版フィリプス曲線」は、「本当のフィリプス曲線」と比べて格段に物価と失業率の相関関係が低下します。ほとんど無相関といってよいほどです。
  • ケインズの「乗数」  誤解と真実

    以前、菅元首相が国会で「乗数効果」とか「消費性向」やらについて質問されて、まごついていたことがありましたが、今回はその「乗数」についてです。 経済学部で経済学を勉強したことのある人ならば、一度ならず眼にし、耳に聞いたことのある術語のはず。しかし、国会議員の先生方がどの程度まで理解しているのか、疑問もあります。(高所から見下すような書き方で申し訳ないのですが、・・・。) ケインズは、『雇用、利子および貨幣の一般理論』(1936年)の一節で、この乗数について論じています。簡単に式で示せば、 Y=C+I  ΔY=ΔC+ΔI   消費性向=限界消費性向c=C/Y=ΔC/ΔY とすると、 Y=Yc+I  ΔY=ΔYc+ΔI よってY=I/(1-c)=I/s=m・I     ΔY=ΔI/(1-c)=ΔI/s=m・ΔI (ただし、s=S/Y=ΔS/ΔY=(限界)貯蓄性向、S=I ) これは単位期間(例え

    gruza03
    gruza03 2014/01/04
    所得再分配や社会的共通資本の整備など、政府のやるべき仕事はたくさんあります。しかし、それらは波及効果のためにやるのではありません。よりよい社会を作るためであり、社会を安定化させるためです。
  • ハイエクは、そんなに偉大か? その2

    ハイエクの「経済学」(というより後で述べるように「思想」)は、決して難しくありません。むしろ、その発想は驚くほど簡単です。彼の著書としては『隷従への道』が有名ですが、それを含む彼の著作の主張は次の2点にまとめられます。もちろん、彼は様々なことを述べていますが、その他のことは概ねこの2つの主張の「系論」(colorary)です。 1 自由な経済活動とは「自由市場」における活動である。 2 それを超え、社会的なものを志向する活動は、必ず諸個人の社会全体への「隷従」をもたらす。 1 われわれは日常的に経済活動をしています。例えば市場で料品を買い、貨幣を支払います。その時、肉や魚の値段を見て、購入するか、別の商品を買うか、別の店に行くかなどの決断をします。そのような日常の市場における諸個人の経済活動、これはハイエクにあっては「自由な経済活動」、彼の推奨する人間の活動です。 2 しかし、社会的なも

    gruza03
    gruza03 2014/01/04
    彼は言います。<私の言うことが正しい。言うことを聴かないと、ただではおかないぞ。>一人の社会的理想に燃えた人が理想的社会をつくろうとして結局は独裁国家を生むことになる
  • ハイエクは、そんなに偉大か? その1

    昔、ハイエク(Hayek)という経済学者がいました。 ときどき彼を論じるが出版されたり、「ケインズとハイエク」というようにケインズと並び称する著書が書かれたりします。 しかし、彼はそんなに偉大な経済学者なのでしょうか? 私には決してそのように思われません。 まず経済学者としての評価の前に、人間としての評価をしましょう。何故ならば、経済学は「モラル・サイエンス」であり、何よりも人間の物質的生活にとどまらず、精神的な生活に直接・間接にかかわる学問であるからです。 1970年代にチリで民主的に成立したアジェンダ政権が軍事クーデターによって倒されるという事件があったことをご存知でしょうか? 今日では、その背後に米国CIAの策略があったことがよく知られています。よく「陰謀史観」の人が根拠なしに憶測で「陰謀」で歴史が作られたことを主張する場合がありますが、それと異なって数多くの史料がそれを明白に明ら

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    gruza03 2014/01/04
    経済学は「モラル・サイエンス」であり、何よりも人間の物質的生活にとどまらず、精神的な生活に直接・間接にかかわる学問であるからです。
  • マルクス その5

    ホランダー(Samuel Hollander)という経済学者がいます。近年(2008年)にケンブリッジ大学出版会から『マルクスの経済学』(The Economics of Karl Marx)というを出版しました。500ページ以上におよぶ大著です。 いつか時間をみて、こののいくつかのトピックスを紹介したいと思いますが、今日は現在でもマルクスが世界で最も注目されている哲学者であることを示し、その後、マルクスが資主義体制内における福祉改革をどのように考えていたかを示す箇所にとどめたいと思います。 最近のBBC Radio-4 世論調査(http://www.bbc.co.uk/radio4/)によれば、「英国の最も尊敬すべき哲学者」が次のような結果になっています。 マルクス          27.93% デーヴィッド・ヒューム   12.67 ヴィトゲンシュタイン      6.80

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    gruza03 2014/01/04
    実際のマルクスは決してそうではなく資本主義体制内における労働者の陶冶や社会改革の意義を認める「修正主義者」(revisionist)だったことは、1860年代から80年代に書かれた多数の論考から判明します。