2010年12月14日 11:52 神は誤信念を持つか だいぶ久々に論文紹介をしようと思う。タイトルからして怪しいし、我々日本人にとって神というのは西洋人ほどは馴染みがないかもしれない。しかし、agencyの理解を考えるうえでなかなか興味深い研究である。 簡単に言うと、誤信念課題において、通常はヒトがagentなわけだが、それを色々と操作した時にどうなるかというタイプの研究である。誤信念課題では、agentが誤った信念を持つために、現実には物体が無い場所を探してしまうことを理解しなければならない。 しかし、西洋人の考えとして、神は全知全能なところがあって、誤信念を持たない。そのため、誤信念課題では正しいところを探索できるのではないか、ということである。 この問題に最初に取り組んだのは、Barret, Richert, & Driesenga (2001)で、スマーティ課題を修正した課題でこ
2009年12月14日 18:56 子どもは自分を信じない? 師走で忙しいのを口実に(いつのまにか自分も「師」側にまわっていたし)更新が滞っておりました。継続は力なので、頑張って続けたいと思います。 さて、今日は、子どもが複数の情報源がある場合に、何を信じるのかという話である。以前の、ソースモニタリングの話とも関連がある。 その中でも、子どもが、自分の経験と他者の証言とが食い違った場合に、どちらを信じるかという話である(Ma & Ganea, 2010)。 まあ正直なところ、類似した研究はけっこうあるように思うが、このような研究は、目撃証言などと深く関連するだけに、重視されるのだろう。裁判における証言のみならず、親からの虐待を受けた際に、子どもがどの程度そのことについて証言できるのか、質問者の誘導にどの程度影響されるのか、などの問題は、社会的にも重要な問題だと考えられる。 実験自体は非常に
2009年10月28日 17:29 大人と子どもでは訓練の効果が違う 今回は、介入研究の話である。タイトルのとおり、大人で効果的な訓練法や教育法も、子どもにあてはめると、ほとんど効果がない可能性があることを示した論文であり、大変興味深い。 以前にも触れたが、ある課題の訓練をして、その課題の成績が向上するか、新しい課題にその訓練の効果が転位するかを調べる。 介入研究の重要性はたくさんあるが、おもに A.発達障害を抱える人への支援方法の開発につながる B,教育法の効果を評価することができる C,遺伝と環境という問題に貢献できる(ある能力が訓練できるとすれば、その能力は遺伝で全て決まっているわけではないことが示される) D.相関関係にある2つの変数の関係を規定することができる(ある能力を訓練すると別の能力も向上したが、その逆が認められなかった場合、2つの能力の因果関係に迫ることができる) などが
2009年09月10日 13:46 大人と子どもの脳の仕組みの違い 幼い頃大好きだったが今そうでもないものもあれば、幼い頃には嫌いだっだけど今好きなものもある。 最たる例は、食べ物の好みだろう。幼い頃にあれだけ好きだった炭酸ジュースやヤクルトが、今はあまり飲めない。逆に、幼い頃あれだけ苦手だった野菜やビールが、今はとても好きになっている(幼い頃からビールを嗜んでいたわけではないが)。 他にも、ここでも繰り返し取り上げている、空想というのもそうだろう。個人的には、小学生くらいまでは空想をよくしていたものである。そしてそれは非常に楽しいものであった。しかし、現在空想をすることは減り、現実的な問題(今夜のおかずは何にしよう)について頭を巡らせることの方が多い。 なぜこのような変化が起こるのかは、非常に興味深いところである。 味覚などの感覚器の変化にともなう心理学的な変化もあれば、脳内のメカニズム
2021年03月12日 16:28 発達心理学の若手研究者の著作 ここ数年、優秀な若手の発達心理学研究者の方々が論文は英語で執筆しつつ、大学院生時代の研究をまとめて日本語で著作にもされている。素晴らしいことだ。 心理学の業界では著作を出すことは重視されているが、従来は、論文も本も日本語で書く人ばかりだった。それが悪いとは言わないが、論文と本の位置づけがイマイチはっきりしない。 私自身、論文は英語で書くべきだが、日本語の本を書くことも後輩たちに勧めてきた。論文を英語で書いた場合に、その内容を日本語で紹介するのも大事だと思うからである。日本語で総説論文を書けばいいのかもしれないが、発達心理学という分野の特徴上、研究者でない方も目を通す、本という形で書くのも大事だと思うからだ。 ここでいくつかまとめて紹介したい。 奥村優子先生 『乳児期における社会的学習: 誰からどのように学ぶのか』 乳児の社会
2009年06月04日 19:09 心の理論の脳内基盤 「やられた」と思った。幼児の心の理論の発達の脳内基盤を検討した論文を見つけた瞬間である。いつかは検討したいなと思っていただけに、先を越された格好だ。 意外なのは、Nature、Science、PNASなどの一般誌に掲載されると思っていたら、専門誌のChild Developmentに掲載されていた点だ。論文の書き方を見るに、Child Development向けの書き方ではないので、一般誌には蹴られたのかもしれない。 心の理論とは、行動から他者の心の状態を推測する能力である。例えば、私が「まつや」の前で突っ立ていたら、それを見た人は、「あの人はまつやの牛丼を食べたいんだろうな」と推測するだろう。重要なのは、あくまで推測しているにすぎない点だ。私は牛丼なんか食べたくなくて、まつやの店員さんに見とれているだけかもしれない。 この能力、特に
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