その長期安定政権は、外交分野で大きな足跡を残した。自ら「地球儀を俯瞰する外交」を掲げて海外歴訪を重ねることで、日本の首相の存在感を発揮した。TPP(環太平洋パートナップシップ)協定交渉に途中参加しながら、発効に至るまで交渉を牽引した。 また安全保障では、新たに発足させた日本版NSCとしての国家安全保障会議とその事務局の国家安全保障局を設置して官邸主導の政策形成の枠組みを作り上げた。 強い反対運動に直面しながらも、第1次政権からの宿願であった集団的自衛権の憲法解釈変更を閣議決定によって断行し、平和安全法制の制定によって、日米同盟を強固にしようとした。 不祥事を生んだ忖度の構造 そもそも安倍首相は、官房長官としての閣僚経験しかない「官邸政治家」である。そこで官邸に経産省出身の今井尚哉秘書官と、警察庁出身の杉田和博官房副長官を中心とする官邸主導の体制を作り上げ、各省をコントロールした。いずれも事