連載「ハイテクの地政学」では、日本、台湾のテクノロジー業界に精通する杉本りうこ氏による最前線レポートをお届けします2024年2月、JASM開所式におけるTSMC創業者のモリス・チャン氏。中国との地政学的緊張に揺れる台湾にとって、TSMCは今や「シリコン・シールド」になっている(撮影:石阪友貴) 米中対立で今や「硝煙なき戦場」と化したハイテクセクター。アメリカや日本の安全保障を考慮した産業政策が、企業経営のチャンスにもリスクにもなっている。そこには当然、世界中の投資家の熱い視線も注がれる。本連載では、地政学リスクの高まる世界における利害対立の最前線を追っていく。 半導体受託製造(ファウンドリー)の世界最大手、台湾TSMC(TSM)は日本で2つの工場建設を進めている。これらに加え、検討が進みつつあるのが3つ目の工場である。この第3工場の立地が、熊本県以外で検討されることが、台湾と日本双方の政策