埼玉県久喜市上内のわし宮団地商店街に、紅茶を売りにする小さなカフェがある。「Kuki紅茶」は、団地の住民だった伊藤康之さん(47)が、過疎化と高齢化が進む古里に元気を取り戻そうと、2021年11月にオープンした。子どもから高齢者まで、幅広い年代が集まる憩いの場となっている。 伊藤さんは草加市で生まれ、生後間もなくわし宮団地に移り、約10年間を過ごした。当時の商店街は駄菓子店や鮮魚店などが軒を連ね、近くの広場では大勢の子どもたちが遊んでいた。しかし、周辺地域で宅地開発が進んだことなどから住民は減少。地元の市立上内小学校も休校となった。 都内で不動産業を営んでいた伊藤さんは4年前、仕事の関係で久喜市を訪れる機会があり、変わり果てた古里の姿を見て言葉を失った。「商店街はシャッターばかりで、子どもたちの声も聞こえない。寂しいの一言だった」。不動産業者として活性化に貢献できないかと考え、かつて書店だ