かつて豪シドニーで最も高いビルだったAMPセンターは、老朽化が目立っていた。時代遅れの1970年代の建築物は寿命を迎え、タワーの所有者は、規模も質もエネルギー効率も向上したものに建て替えたいと考えていた。 だが、建設廃材に始まって重機から排出される二酸化炭素にいたるまで、高層ビルの解体には相当量の環境費用が発生する。そこで2014年、オーストラリアの投資会社AMPキャピタルは前代未聞の題目でコンペを実施した。古い建物を解体せずに、新しい高層ビルを建てろというのだ。 結果的に、世界初の「アップサイクル」高層ビルは今年入ってオープンし、今月2日には22年の「ワールド・ビルディング・オブ・ザ・イヤー」にも選ばれた。高さ676フィート(約206メートル)、49階建てのそそり立つ高層ビル「キー・クォーター・タワー」は、梁(はり)や柱といった元の構造体の3分の2以上、コア部分の95%をそのまま残してい