アントニン・レーモンドに師事し、モダニズムと伝統的な木造建築を融合させた建築家の吉村順三。このほど彼が手がけたわずか10坪、最小の建築が取り壊しの危機から救われた。 都内の組織設計事務所に勤める辻林舞衣子は、吉村建築を訪れ何げなくSNSに投稿した。すると、それを見たスキー仲間から「昔使っていた別荘を建てた人と同じでびっくり」という連絡が届く。驚いて詳しい話を聞くと、箱根にあるその建物は壊れて使えず20年以上誰も住んでいない状態で、売却契約間際、来月には解体されるかもしれないという状況だった。彼女は吉村の作品集を確認し、友人と同じ苗字の施主の名前が記載されている物件を確認。友人とその親族に売却を待ってもらい、箱根・仙石原にあるその建物を見せてもらうことに。 「うっそうとした薮に包まれていた建物は、わずか10坪。入口の階段は温泉の硫黄で朽ち、外壁は張り替えられてはいましたが、高床式であったこと