昨日から何度も何度も聴いているけれど、感動と興奮が少しも薄まることのない本当に素晴らしいアルバムだ。 そして数少ない、2017年現在の世界を包み込む巨大なネガティヴな空気に対抗する力を持つ音楽的表現が具体的にここにはある。 グローバリゼーションの限界が露呈して、明るい未来への希望はなくなって、すべては終わってしまったように思える。 民衆が能動的になれる原動力は、他人のことを思いやる大きな「愛」ではなくて、たとえばドナルド・トランプのような人物が扇動することを得意とする「怒り」。 そんな時代の空気の中で「愛」をイノセントに表現することは有効ではない。 そこで高い知性によって建設的な力を持つ「怒り」のメッセージを凝縮させてこの世界と闘った、2017年もう一つの大傑作がケンドリック・ラマーの『DAMN.』。 一方、U2『ソングス・オブ・エクスペリエンス』はあくまでも「愛」をまっすぐ表現している。