カークはフルート(fl、nose-fl、c-fl、african-fl)奏者としても名手だったが、独自に開発した演奏技巧を用いていた。その技巧の一つが、楽器を吹きながら同時に口ずさんだりハミングするというもの。また、普通のフルートを鼻笛として他の楽器と一緒に用いるという技巧も使った。 カークの舞台上での奇矯ないでたちや、複数楽器の同時操作を、とりわけカークが盲人であったことから判断して、単なるインチキと判断する向きもあったが、このような見方も、いざカークが演奏を始めると、消し飛ぶのが常だった。カークは複数の管楽器を操って正しい和音を鳴らしており、本質的に一人でサクソフォーンのアンサンブルを奏でていた。もっとも本人は、自分の頭の中で聞こえた響きをなぞろうとしているにすぎないと主張している。 カークは、循環呼吸(円環呼吸)の理解者にして実践家であった。この呼吸法を用いることによって、単音を自在
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