FED(アメリカの中央銀行)がさらなる非伝統的な金融緩和に踏み込むかもしれないということで、最近はまたリフレ論争がインターネットで活発になってきた。筆者は、中央銀行というのは物価の安定を第一に考え受動的に金融政策を実行すればいいのであって、物価の安定を損なう大きなリスクや、将来の国民負担につながりかねないような非伝統的政策をやすやすと取るべきではないと考えている。そのような国民生活に大きな影響を与えうる政策を、選挙で選ばれてもいない中央銀行の官僚が実行するべきではないし、現在の法律では実行できないようになっている。また円の為替レートに関しても、安易な政府の介入に頼ることなく、民間企業の自発的な経営判断を尊重するべきだ。すなわち、円がファンダメンタルズより割高なら、海外の会社を買収したり、海外の資源を備蓄するチャンスなのだ。アメリカの5000億円の会社をよっつも買収すれば、合計で2兆円の円を
野田佳彦財務相にとって、無秩序な為替レートの動きに対して20カ国・地域(G20)が先週末発した警告は、円がこの先、ドルやユーロとの「より安定した関係」を享受する可能性を示唆するものだった。 そうなる可能性は低そうだ。少なくとも、安定の定義をドルに対する円高進行の終焉とするなら、その可能性は低いだろう。円高傾向は、先月、日本政府の巨額円売り介入を受けて一時的に止まっただけで、ほぼ間断なく続いている。 先週韓国で開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議は、この流れを加速させた可能性さえある。市場参加者は、曖昧な表現の共同声明によって、日本の追加為替介入が難しくなると考えているからだ。 ドルは10月25日に対円で1%以上下げて1ドル=80円41銭をつけ、15年ぶりの安値を更新した。ドルは今、戦後最安値の1ドル=79円75銭を視野に入れている。 効果がなかったG20の声明、日本政府に打てる手は?
G20財務相・中央銀行総裁会議では世界通貨安競争について議論されている。 さすがに、経済学者で通貨安競争が悪いことだと述べている記事はまだ見ていないが(見ていないだけかもしれない)メディアは、通貨安競争や戦争と煽っている。 なぜ通貨安競争は悪いとメディアは主張しているのだろうか。 メディアの批判は主に二つだろう。 まず、ひとつは保護主義的な政策は戦争につがなるというものである。 WTO加盟国にはこの批判は当てはまらないだろう。もっともWTOが公平でないという意見はあり得るが、それはWTOの制度の問題であって、通貨安が問題ではない。 ではWTO非加盟国ではどうだろうか。非加盟国である限りWTOで報復措置や制裁を受けることはない。いくらでも保護主義は取り得ることになるが、平時からWTOに加盟せず自由に保護主義を行っている国が、有事になったら「近隣窮乏化政策だ」「保護主義だ」と他国を批判できる資
14日のロンドン市場では、ついに1ドル=80円台に突入したが、私が資産を運用している大手の外資系銀行のファンドマネジャーからかかってきた電話は「円建て資産を売りませんか」だった。私が「実質実効為替レートでみると、円はまだ安い。この先まだ上がるんじゃありませんか?」というと、彼は「目先は80円を切るかもしれないが、われわれは今が(ドル円の)底値圏とみています」。 名目為替レート(ドル/円 左目盛)と実質実効為替レート(2005年=100 右目盛) それはなぜか、という私の質問に対する彼の答は明快だった。たしかに図のように、インフレ率などを勘案した実質実効レートでみると、今の円相場はここ15年の平均程度だ。しかし彼によれば「それが日本経済の実力なんですよ」。名目レートで円が強いように見えるのは、アメリカの物価が15年間に30%以上あがったのに対して、日本はほぼゼロだったためで、購買力でみた円の
8日、ワシントンで開かれた先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は、各国が景気刺激のために輸出に有利な自国通貨安を望む「通貨安競争」の回避に向けて協調することで一致して閉幕したと報道された。 欧米の中では、一部で「通貨戦争」(CURRENCY WARS)という言葉さえ出始めている。ブラジルのマンテガ財務相は、この言葉を使って自国通貨安政策をとる先進国を非難した。日本のマスコミも安易に「通貨安戦争」を使っている。しかし、最新の国際経済学によれば、こうした「言葉」をうのみにできない。 ブラジルの例を考えてみよう。確かに、米や欧州で金融緩和が行われ、結果としてブラジル・レアルが高くなった。8日、1ドルが1・667レアルとなって2年ぶりの高値だ。これは、9月18日の本コラムで示したように、「為替レートはそれぞれの通貨の相対的な存在量で決まり、相対的に希少な通貨ほど為替レートが上昇する」に従
(英エコノミスト誌 2010年9月25日号) 単一通貨を修復しようとする欧州連合(EU)の計画は、肝心な点を見失う危険がある。 少なくとも、ギリシャがデフォルト(債務不履行)の瀬戸際に立たされていた今春のパニックはいくらか収まった。 ユーロ導入国の中で最も脆弱なギリシャとアイルランドはいまだに高い資金調達コストを払っているが、緊縮財政措置は実施されている。先日は、巨額のユーロ圏救済基金が切望されていたトリプルA格付けを獲得した。 というわけで、今はユーロの規則を見直す良い時期だ。欧州委員会は9月末、ヘルマン・ファンロンパイ欧州理事会議長(欧州連合=EU=大統領に相当)を長とするタスクフォースが協議の題材とする提案を発表する。残念ながら、一連の提案は、間違った標的を手当たり次第に攻撃し、より深刻な問題を見落としてしまう可能性がある。 欧州の単一通貨は決して大失敗ではなかった。物価の安定という
14日に投開票が迫った与党民主党の代表選挙は接戦になっており、誰が勝利を収めて日本の新しい首相になるかはまだはっきりしない。しかし、選挙の勝者が最初に直面する経済政策が円に関する厄介な問題であることは確実だ。 先週、1ドル=83円50銭という15年ぶりの高値をつけた円高に対する懸念は、菅直人首相と小沢一郎氏による今回の代表選挙でも既に大きな役割を果たしている。 選挙戦で小沢氏は、急激な円高に対しては為替市場への介入を含む「あらゆる方策」を実施すると公約。一方の菅氏は「断固たる」措置を取る用意があると明言し、市場介入に踏み切る事態に実務の面から備え始めた。 「日本が何らかの行動を取った時に、(欧米には)ネガティブなことは言わないでほしいと色々やっている」。菅氏は9月10日、代表選の公開討論会でこう語った。 この発言の背景には、不満をますます強めている経済界の存在がある。円高は日本の輸出競争力
外国為替市場で急激な円高が進み、警戒感が高まっている。8月30日に、政府・日銀がようやく経済対策と金融緩和政策を公表したが、円相場は1日で円高に振れる限定的な効果に留まった。1ドル70円台の可能性も囁かれるなか、この円高トレンドはいつまで続くのか。そして、政府・日銀が打つべき策はないのだろうか。田中泰輔・野村證券外国為替ストラテジストは、米国経済・金利見通しの下方修正が背景である以上、日本当局が対策を打っても「糠に釘」で、期待できるのは時間稼ぎの効果までと分析する。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子) 米国と欧州の経済・市場が非常に厳しい状況にある今、「円安ドル高トレンド」を形成できる環境にはない。そもそも日本の国内政策で米国の情勢が大きく変わる訳でもなく、円高の流れを転換できるとは見ていない。 日本は長年経常黒字を積み上げてきた債権国である。内外経済状況が悪化して、国際的な資金の
民主党代表選が大詰めを迎え、菅直人首相VS小沢一郎前幹事長の論戦が白熱化している。両氏とも経済政策では疑問点が多いのだが、論戦を通じて意外な収穫が1つだけあった。それは、小沢氏が「為替政策」に関して正論を展開したことである。 もっぱら「市場介入」の有無に関心を集めるマスコミは詳しく取り上げなかったが、次期首相になるかもしれない小沢氏の「正論」は押さえておいた方がいいだろう。 本論の前に、経済運営に関する両氏の主張を整理したい。菅氏のスローガン「一に雇用、二に雇用」には、「本末転倒」の感を否めない。雇用確保は確かに重要だが、それで経済が良くなるわけではない。順番は逆で、経済成長を通じて雇用は確保されるものだ。 一方、小沢氏はマニフェスト(政権公約)の厳守を訴えるが、その財源確保は説得力に乏しい。歳出構造の大胆な見直しが本当にできるのか。また、政府資産の証券化で資金を捻出する案も披露したが、こ
Tweet 2010/9/20:0 ドル安ではない。円高こそ問題だ。 片岡剛士 為替レートは84円台、日経平均は9000円割れと、円高・株安がつづいている。 以下では円高・株安をめぐる日本経済の現状と政府・日銀の政策判断について、著名エコノミストの浜矩子氏の論説「円高ではない。これはドル安だ」(http://webronza.asahi.com/business/2010083100001.html)を例にとって論点を整理し、読者の方々の理解に供することにしよう。 ◇為替問題は「ドル安」なのか?◇ 浜氏はまず確認と整理を要する点として、ふたつあげている。 一点目は、為替の現状は円高ではなくドル安によるものであり、現代はドルに対する過大評価の歴史的修正と見るべきというもの。二点目は、中央銀行は政府の景気対策機関ではなく、通貨価値の番人であり、政治と政府からの独立性を制度的に明記している、とい
8月30日に、政府・日銀が金融緩和政策と経済対策を公表したが、その効果は1日と持たず、円相場は円高に振れた。世界的に見ても、経済成長率は低く、政府は膨大な債務を抱え、政治は混乱している。本来なら、円が売られる要因を抱えていながら出現した「おかしな円高」は、なぜ起こったのか。まずは、今回の円高の要因を整理してみよう。 第1の要因は、アメリカの短期金利の低下が、長期金利の低下にまで波及し、日本の実質金利が高くなってしまったことだ。8月には米FRB(連邦準備制度理事会)が、保有するモーゲージ証券などの償還資金を、米国債の購入に当てる金融緩和政策を維持することを決定し、長期金利の低下が進んだ。 プロの投資家たちは、名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利を基準にしてマネーを動かす。ごく大雑把にいえば、日米の名目の短期金利はほぼ0%で同じ。にもかかわらず、米国のインフレ率は2%弱で、日本はマイナス
要約 実力なき通貨高は極めて危険 通貨高はデフレを助長する 通貨高は不景気を一層深刻にする よく「自国通貨高でおちぶれた国は無い」という俗説を主張する人が居ます。そういう人は実際に身銭を切って海外に投資した経験の無い人でしょうね。 実際には自国通貨が高すぎて経済がボロボロになった例はいくらでもあるし、自国通貨が高いままに放置することの恐ろしさは強調しても強調しきれません。 自国通貨が高すぎて経済が破綻した最近の例は10年前のアルゼンチンです。 この交換比率を維持するためにアルゼンチン政府は兌換法(Ley de Convertibilidad)という法律を定め、国内で流通する通貨(ペソ)と外貨準備額を一致させることに決めました。こうすれば庶民がペソをドルに替えたいと希望すれば、全員、必ずドルに両替できるわけです。 この兌換法は最初は上手くいきました。 自国通貨が高いので慢性的なインフレに悩ま
2010年08月19日09:38 カテゴリ経済 隠れた社会主義 民主党のデフレ脱却議連は、政治家が物笑いになるネタを提供するのが仕事らしい。事務局長の金子洋一氏は「日本単独でも介入して1ドル95円にしろ」と主張しているが、10円もドルを増価させるには何兆円かかると思っているのか。 現場のトレーダーである藤沢数希氏も指摘するように、1日100兆円近く取引されるドル/円取引の中では、政府の数兆円の介入なんてほとんど問題にならない。各国の政府が協調するならまだしも、欧米諸国が自国通貨安を放置している中で、日本政府だけが介入したって税金の無駄づかいになるだけだ。 もちろん今のような急激な円高はよくないし、デフレもよくない。円安やマイルドなインフレが望ましいということに反対する人はほとんどいない。しかしそれが望ましいということと、政府がつねに望ましい状態を実現できると信じることは別だ。デフレ脱却議連
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