実に貴重な報告書が復刊されていることを知った。『流行性感冒――「スペイン風邪」大流行の記録 』(東洋文庫)。約100年前、世界で数千万人の命を奪ったというスペイン風邪について、直後に日本国内での被害状況や対応を総括した公的文書だ。内務省衛生局の作成。2008年に平凡社の「東洋文庫」に収められている。改めて手に取り、味読する価値が十二分にあると感じた。 日本では38万人が死亡 本書の原本は大正11(1922)年の刊行。冒頭に「内務省衛生局」による「巻頭言」が掲載されている。当時の苦労ぶりがわかるので再録しよう。 「全世界を風靡したる流行性感冒は大正七年秋季以来本邦に波及し爾来大正十年の春季に亘り継続的に三回の流行を来し総計約二千三百八十余万人の患者と約三十八万八千余人の死者とを出し疫学上稀に見るの惨状を呈したり。 当局は毎次の流行に対し常に学術上の知見と防疫上の経験とに鑑み最善の施設を行ひ之
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